最高人民法院と知的財産局が2025年の知的財産権保護状況に関するデータを公表

最高人民法院と知的財産局が2025年の知的財産権保護状況に関するデータを公表


中国では毎年426日の世界知的財産の日前後に、最高人民法院や知的財産局から、前年の知的財産権保護状況に関する統計データが公表される。

最高人民法院は4月20日に「中国法院知的財産権司法保護状況(2025年)」 を、知的財産局は5月7日に「2025年中国知的財産権保護状況」をそれぞれ公表した。本記事では、これらに基づいて、2025年の司法ルート・行政ルートでの知的財産権の保護状況に関する主なデータを紹介する。

 

1.司法ルートでの知的財産権の保護状況

(1)民事訴訟に関するデータ

2025年の全国の人民法院が新たに受理した民事訴訟第一審の合計件数は473,411件で、前年比5.22%増加した。その内訳は、著作権関連が259,248件(54.76%)、商標関連が121,133件(25.59%)、専利関連が52,177件(11.02%)、不正競争関連が11,684件(2.47%)、技術契約関連が11,782件(2.49%)、その他が17,387件(3.67%)であった(【表1】【表2】【表3】参照)。商標関連のみ121,133件と、前年比3.03%減少した。専利関連の事件には、特許・実用新案・意匠に関する事件が含まれる。

 

民事訴訟第二審の合計件数は24,515件で、前年比19.59%減少しており、表1に示すように、2021年以降減少が続いている。


【表1】20212025年全国人民法院の民事訴訟受理件数(単位:件)

審級・事由 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 前年比
民事一審 550,263 438,480 462,173 449,923 473,411 5.22%
内訳 専利(特実意) 31,618 38,970 44,711 44,255 52,177 17.90%
商標 124,716 112,474 131,429 124,918 121,133 -3.03%
著作権 360,489 255,693 251,687 247,149 259,248 4.90%
不正競争 8,419 9,388 10,230 10,567 11,684 10.57%
技術契約 4,015 4,233 6,492 8,320 11,782 41.61%
その他 21,006 17,717 17,627 14,714 17,398 18.17%
民事二審 49,084 46,524 37,214 30,486 24,515 -19.59%

【表2】2021年~2025年全国人民法院の民事訴訟第一審受理件数
(単位:件)


【表3】2025年全国民事訴訟第一審の種類別内訳


(2)行政訴訟に関するデータ

2025年全国の人民法院が新たに受理した行政訴訟第一審の合計件数は27,451件で、前年比31.67%増加した。そのうち、商標関連は24,334件で全体の88.65%を、専利関連は3,070件で全体の11.18%を占める。著作権関連は200%増加し、27件となったが、その他は35.48%減の20件にとどまっている。

 

一方、2025年全国人民法院が新たに受理した行政訴訟第二審の合計件数は11,097件で、前年比4.88%減少した(【表4】【表5】参照)。


【表4】20212025年全国人民法院の行政訴訟受理件数(単位:件)

審級・事由 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 前年比
行政一審 20,563 20,634 20,583 20,849 27,451 31.67%
内訳 専利(特実意) 1,810 1,876 1,990 1,679 3,070 82.85%
商標 18,734 18,738 18,558 19,130 24,334 27.20%
著作権 19 12 11 9 27 200%
その他 0 8 24 31 20 -35.48%
行政二審 8,215 5,897 10,053 11,666 11,097 -4.88%

【表5】2021年~2025年全国人民法院の行政訴訟第一審受理件数推移

(単位:件)


(3)刑事訴訟に関するデータ

2025年全国の人民法院が新たに受理した刑事訴訟第一審の合計件数は9,018件で、前年比1.12%減少した。その内訳は、商標関連が7,862(前年比2.69%)、その他(専利関連を含む)が85件(17.65%減)と減少した一方、著作権関連が1,071件(14.18%増)と増加している。また、刑事訴訟第二審の合計件数は1,153件となり、前年比3.69%増加した。


【表6】20212025年全国人民法院の刑事訴訟受理件数(単位:件)

審級・事由 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 前年比
刑事一審 6,276 5,336 7,335 9,120 9,018 -1.12%
内訳 商標 5,869 4,971 6,634 8,079 7,862 -2.69%
著作権 333 304 627 938 1,071 14.18%
その他 74 61 74 103 85 -17.65%
刑事二審 1,050 979 956 1,112 1,153 3.69%

【表72021年~2025全国人民法院の刑事一審事件受理件数推移

(単位:件)

 

2.行政ルートでの知的財産権保護

(1)専利権に基づく行政ルートでの権利行使

2025年に全国の市場監督管理局が調査・処理した専利関連の違法事件は881件に上り、侵害品および偽造品の全国統一廃棄処分行動において、総額43,200万元相当の侵害品や偽造品(200種類以上、計3,683トン)が廃棄処分された。また、全国の知的財産局が処理した専利侵害紛争は、受理件数が9,520件、審理終結件数が9,520件であった。

 

(2)商標権に基づく行政ルートでの権利行使

2025年に全国の市場監督管理局が調査を行った商標関連の違法事件は3.6万件に上り、うち司法機関に移送された犯罪事件は1,128件であった。

 

3.まとめ

昨年は、知的財産権保護に関して、民事訴訟・行政訴訟の第一審受理件数が増加した一方、刑事訴訟は減少した。また、59件の悪質な代理業務機関・個人が重大な違法行為のリストに掲載された。違法・不正な代理行為の厳格な取締りが強化されている。

 

民事訴訟に関する過去5年間の推移を見ると、不正競争・技術契約に関する事件の第一審受理件数が2021年以降、増加を続けている。これは、不正競争や営業秘密侵害の増加を示しており、それに応じて、2025年には不正競争防止法が改正されるなど、立法・司法による取り組みが強化されている。

 

また、行政ルートにおいても、知的財産侵害行為に対する罰則が厳格化されている。更に、犯罪を構成するような悪質な商標関連違法行為については、行政ルートでの取締りに続き、司法機関に移送されて刑事事件としても立件することが増えている。中国における権利行使では、司法ルートのみではなく、行政ルートに特有の特徴を理解し、更に刑法による取り締まりも視野に入れるなど、多角的に用意されている権利行使オプションを有効に利用していくことが、権利者にとって、ますます重要になってきていると言える。

CONTACTお問い合わせ

ご相談・お問い合わせは、
Webフォームから承っております。

メールでのお問い合わせ