中国専利審査指南改正案(2025 年 4 月 30 日公表)の詳細【中国】【特許】
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Shangcheng Newsletter Vol. 26(2025-7)
<尚誠ニュース>
●尚誠スタッフで「仙居」に所員旅行に行ってきました
<中国知財ニュース>
●2025 年 4 月 30 日に公表された「専利審査指南改正案」の詳細について
<尚誠ニュース>
●尚誠スタッフで「仙居」に所員旅行に行ってきました
弊所では、2025 年 6 月、チームビルディングの一環として、中国浙江省「仙居」への 3 日間の所員旅行を実施しました。「仙居」は、浙江省南東部に位置し、かつては「楽安」「永安」とよばれていた古都ですが、「神仙居(天姥山)」などの豊かな自然に囲まれていることから、グリーンツーリズムの拠点として近年とても注目されている景勝地です。
初日は仙居名物「ヤマモモ摘み」をしました。スタッフ全員で、山の斜面を登っていき、協力してヤマモモを摘みました。その後、農家民宿で地元の食文化を体験しながらスタッフ同士で意見交換をしました。
二日目には、「神仙居(天姥山)」へハイキングに行きました。神仙居は火山流紋岩からなる独特な地形が美しい場所で、山峡に様々な珍しい形をした橋が架けられていることでも有名です。その 1 つの「如意橋」は、橋の床が透明なガラスでできており、そのガラスの床から遥か下に峡谷の奇景を見ることができるスリリングな橋なのですが、この橋をスタッフ皆で声を掛け、手を取り合いながら協力して渡りました。
今回の所員旅行を通じて、大自然の中でリラックスすると同時に、弊所の北京・上海・東京のスタッフ全体のチームワークを高めることができました。尚誠は今後も定期的にこのような活動を実施して、より良いチームを作ってまいりたいと考えております。
<中国知財ニュース>
●2025 年 4 月 30 日に公表された「専利審査指南改正案」の詳細について
- 1.改正案の概要
中国の「専利審査指南」は、特許・実用新案・意匠の審査・審判における運用ルール及び審査基準を定めたものであり、比較的頻繁に改正されている。国家知識産権局は、本年 1 月より次回改正のための準備作業を開始し、4 月 30 日に改正案を公表して、6月 15 日までパブリックコメント募集を行った。そこでの議論を踏まえた最終的な改正内容は、今後、発表される。本稿では、この改正案の内容を紹介する。
- 2.主な改正ポイント
改正案は、形式審査、実体審査、PCT 出願、審判、手続き関連の全分野におよび、主に以下の17項目の改正ポイントを含む。人工知能(AI) 等に関する発明やビットストリームを含む発明の審査基準・審査事例が追加されたことが、特に注目される。また、願書に記載すべき発明者情報の追加や、進歩性の審査基準の追加、特許期間調整の延長期間算定ルールの一部変更等も、実務への影響が比較的大きな項目と言える。
以下のリストでは、各項目の詳細説明へのリンクを設けた。関心のある項目をクリックして、詳細を確認頂ければ幸いである。
【形式審査部分】
(1)願書に記載すべき発明者情報の追加
(2)分割出願の優先権主張に関する運用の整理
【実体審査部分】
(3)保護対象外となる「植物品種」の定義の明確化
(4)特実同日出願制度の一部改変
(5)進歩性の審査基準・審査事例の追加
(6) AI 等関連発明の審査基準・審査事例の追加
(7)ビットストリームを含む発明の審査基準・審査事例の追加
【PCT 出願関連】
(8)国内移行時の優先権譲渡証への署名者の明確化
【復審・無効審判関連】
(9)審決における記載の簡略化・省略
(10)他人名義での無効審判請求の禁止
(11)無効理由の「一事不再理」範囲の明確化
(12)無効審判中の訂正に関する運用の明確化
【手続き関連】
(13)配列表のページ加算の廃止
(14)オフィシャルフィー返還請求のルール変更
(15)加速審査の明文化
(16)国際出願の登録証への記載内容の明確化
(17)特許期間調整の延長期間算定ルールの一部変更
3.改正内容
【形式審査部分】
(1)願書に記載すべき発明者情報の追加
現行の願書では、第一発明者についてのみ、身分情報として、国籍と、中国籍の場合には身分証明書番号の記入が求められている。改正案では、発明者全員について身分情報の記入が必要となることが規定された。この改正が正式に実施された場合、中国出願をするためには、発明者全員の国籍情報と、中国籍の発明者全員の身分証明書番号とを把握する必要が生じるため、発明者情報の管理負担が増加する。
同時に、願書に記載する発明者の身分情報、出願人の身分情報及び連絡先情報の真実性・有効性について、代理機構(訳注:特許事務所)が責任をもって確保すべきであることが規定された。
(2)分割出願の優先権主張に関する運用の整理
改正案では、優先権主張を伴う親出願から分割された分割出願において、出願時に優先権主張がなされなかった場合、「優先権主張をしなかったとみなす」旨の通知書が発行されることが規定された。出願人は、当該通知書の受領日から 2 か月以内に所定の回復料を納付し、優先権の回復を請求することができる。
従来の実務でも、親出願が優先権主張を伴う場合、分割出願で優先権主張をしなかったとしても、後日に優先権の回復が認められていた。本改正は、こうした既存のルールを変更するものではなく、回復プロセスを明確化したものに過ぎない。
【実体審査部分】
(3) 保護対象外となる「植物品種」の定義の明確化
専利法第25条第1項第4号では、「動物及び植物品種」は特許権による保護の対象外と規定されている。改正案では、この「植物品種」について、「特異性、一致性及び安定性を備える植物グループである」と定義し、更に、「特異性、一致性、安定性」について、「当該植物グループが他の植物グループと明確に識別可能であり、繁殖後も形態的特徴および生物学的性質の一致性を保ち、かつ遺伝形質が安定していることを指す」と規定した。
特異性(Distinctness)、一致性(Uniformity)及び安定性(Stability)を備える、という「DUS 基準」は、植物新品種として保護されるための要件として、「国際植物新品種保護条約」により確立され、既に中国の「種子法」及び「植物新品種保護条例」にも取り入れられている。
本改正案は、「種子法」及び「植物新品種保護条例」との間で用語の定義を統一すると同時に、「DUS基準」を満たす植物新品種は、「種子法」に規定された植物新品種権による保護の対象となる一方、「DUS 基準」を満たさない育種の中間材料等は、専利法の保護対象になり得るという、両法の補完関係を明確にしたものである。
改正案では、更に具体的に、自然界において発見された、技術的処理を経ていない天然の野生植物は、専利法第 25 条第 1 項第 1 号に規定される「科学上の発見」に該当し、特許権による保護の対象外だが、野生植物が人工的な選抜育種または改良を経ており、産業上の利用価値を有する場合には、「科学上の発見」には属さず、保護対象となり得ることが明記されている。
(4)特実同日出願制度の一部改変
同一出願人が同じ発明・考案について同日に特許・実用新案の両方を出願することを認める、いわゆる特実同日出願制度は、2010 年の専利法実施細則改正により導入され、現在も利用されている。同制度では、実用新案出願が設定登録された後、特許出願の審査において、その他の登録要件が全て満たされていると判断された際に、出願人に対し、実用新案権と特許権のいずれかの選択を求める通知が発行される。従来、通知を受け取った出願人には、実用新案登録を放棄して同内容について特許権の設定登録を受けるか、実用新案登録を維持したまま特許出願の内容を補正して両方を権利化するか、の2つの選択肢があった。これに対し、改正案では、当該通知の受領後、出願人が実用新案登録を放棄しなければ、特許出願は却下されると規定されている。よって、改正後は、特許出願を補正して特許・実用新案の両方を権利化することは許されず、出願人は必ず、実用新案権又は特許権のいずれかを選択しなければならない。
また、改正案では、更に、同制度を利用して出願された発明・考案が「同じ発明・考案」に属するか否かは、出願人の声明に基づいて認定することが規定された。これは、同制度を利用する旨を声明してなされた特許・実用新案出願について、出願人・権利者が後日に、「同じ発明・考案ではない」と主張することを許されない規定と理解できる。
本改正案と同時に公表された「改正案の解説」によれば、これらのルール変更の目的は、同日出願された特許・実用新案出願の両方が登録された場合にもたらされる権利維持・権利行使に関する問題の軽減とともに、審査リソースの節約、出願人の負担軽減、更に審査結果に対する社会の予見性の向上とされている。
(5 )進歩性の審査基準・審査事例の追加
進歩性審査基準の中に、「技術的課題の解決に寄与しない特徴は、たとえ請求項に書き入れたとしても、通常、発明の進歩性に影響を与えることはない。」との一文が追加され、以下の具体例が追加された。「改正案の解説」では、この点について、「技術的課題の解決に寄与しない特徴」は、発明に進歩性をもたらしたり、進歩性の程度を上げたりするものではないと説明している。
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【例】 あるカメラに関する発明において、発明が解決しようとする技術的課題は、「より柔軟なシャッター制御の実現」であり、この技術的課題は、カメラ内部の関連する機械構造および電気回路構造の改良によって実現されるものである。審査官が請求項に記載の発明は進歩性を有しないと指摘した後、出願人は、請求項に、カメラ外装の形状、ディスプレイの大きさ、バッテリー収納部の位置などの特徴を追加した。 |
上記の改正は、現在の進歩性の審査基準を踏襲するものではあるが、今後の進歩性の審査に少なからぬ影響を与える可能性がある。
中国の進歩性審査において、ある技術的特徴に基づく進歩性が認められるためには、通常、当該特徴により優れた技術的効果がもたらされることが求められる。更に、化学分野では、当該効果が実験データ等により証明されていることが求められる。即ち、従来の進歩性審査においても、審査官は、発明の技術的課題の解決に寄与する特徴を重視する審査を行ってきた。上記の審査基準の改正は、このような従来の審査方針に明文の根拠を与えるものである。改正後、審査官は、より大きな裁量権をもって、発明による技術的課題の解決に寄与する技術的特徴と、寄与しない技術的特徴とを区別し、前者のみを対象に進歩性の審査を進めることが可能になる。
改正後の審査基準に基づき、請求項に記載された特定の技術的特徴が、発明による課題の解決に寄与しないと判断された場合、出願人は、まず、審査官が認定した技術的課題の妥当性を検討し、認定が誤っていると考えた場合には、これに反論する必要がある。次に、当該技術的特徴が発明による課題の解決に寄与しないとの認定に対し、明細書の記載や補充の実験データ等を用いて反論することができる。そのため、
改正後の実務では、明細書に、それぞれの技術的特徴とそれによる効果の関係を説明しておくことが、一層重要になる。
更に、上記の規定は、発明の解決課題と関係のない特徴を追加する補正が行われた出願を、審査官が拒絶する際の根拠ともなり得る。例えば、進歩性欠如の拒絶理由に応答する際、直接拒絶査定となることを避けるために、請求項に重要ではない特徴を付け加える補正を行った上で、意見書で審査官の認定に反論することは、実務上、比較的頻繁に行われている。改正後は、上記の規定を根拠に、このような出願が直接拒絶される可能性が高まることも考えられる。知的財産局は現在、審査期間の短縮に積極的に取り組んでおり、本改正の目的には、審査資源の節約と審査スピードの向上も含まれることが明らかである。
(6 )AI 等関連発明の審査基準・審査事例の追加
今回の改正案で最も注目されるポイントの一つは、AI 等関連発明の審査基準が拡充されたことである。
従来、審査指南第二部分第九章第6節に設けられていた「アルゴリズム特徴又はビジネスの規則及び方法特徴を含む特許出願の審査関連規定」と言うセクションの名称が、「人工知能等に関する特許出願の審査関連規定」へと変更され、更に、公序良俗要件、進歩性、実施可能要件に関する審査基準や審査事例が拡充された。今回追加された内容の一部は、2024 年 12 月に知的財産局が公表した「AI 関連発明の特許出願ガイドライン(意見募集稿)」に記載されていた内容を踏襲している。
改正案の具体的な内容は、以下①~④の通りである。
① 審査原則の明確化
従来、AI 等関連発明の審査の対象は請求項に記載された発明であると規定されていたが、更に、「必要時には明細書の内容に対して審査すべき」との規定が
追加された。この変更は、これまでの審査の原則を明確化するものに過ぎない。
② 公序良俗違反要件の審査基準・審査例の追加
新たに、専利法第 5 条第 1 項に規定の公序良俗要件に関する審査基準が設けられ、「アルゴリズム特徴又はビジネスルール・方法特徴を含む特許出願が、法律、社会道徳に反する、又は公共の利益を害する内容を有する場合、例えば、データ収集、ラベル管理、ルール設定、推薦・意思決定等に法律違反、公平正義違反、差別偏見等が存在する場合、専利法第 5条第 1 項に基づき、特許権は付与されない」ことが規定された。
更に、専利法第 5 条第 1 項違反の例として、以下の2つの審査事例が追加された。AI 等関連発明に限らず、中国の特許審査では、「個人情報保護法」等の現行の中国の他の法規に反する発明は、公序良俗要件違反と判断される点に注意が必要である。
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【例1】 ビッグデータに基づく商業施設内のマットレス販売支援システム 請求項: ビッグデータに基づく商業施設内でのマットレス販売支援システムであって、マットレス展示装置および管理センターを含み、 分析及び結論: |
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【例2】 無人運転車両の緊急時意思決定モデルの構築方法
分析及び結論: |
③ 進歩性の審査例の追加
AI 等関連発明の進歩性の審査例として、以下の二例が追加された。審査基準そのものには、特に変更はなく、事例のみの追加である。
中国のコンピュータソフトウェア関連発明の審査では、請求項に記載された特徴が技術的特徴と非技術的特徴に分けられ、非技術的特徴については、「技術的特徴と機能的に相互に支持し合い、相互作用関係がある」場合のみ、技術的特徴と一体のものとして、進歩性判断時に考慮される。AI等関連発明について言えば、主に、①AI アルゴリズム・モデルが具体的な技術分野に応用され、具体的な技術的課題を解決可能な場合、②AI アルゴリズム・モデルとコンピュータシステムの内部構造に特定の技術的関連性が存在し、コンピュータシステムの内部性能の改善を実現した場合、③AI アルゴリズム・モデルと技術的特徴が共同してユーザ体験の向上を実現した場合に、アルゴリズムの特徴が、技術的特徴と合わせて考慮される。今回の改正案で追加された2例は、いずれも上記①の、AI アルゴリズム・モデルを特定の技術的分野に応用するものである。
このうち、例 18 の「画像から船舶の数を識別する方法」では、引用文献に開示された樹上の果実の数を識別する方法と比べ、画像情報のマーキング、データセットの区分け、モデルの訓練等のステップが特に変更されていないため、船舶分野に特有の具体的な技術的課題を解決しているとは言えず、進歩性を有しないと判断された。
例19の「鉄スクラップの等級を分類するためのニューラルネットワークモデルの構築方法」は、実際の裁判例に基づく例である。例 19 の方法では、引用文献に記載の発明とは異なる課題を解決するために、モデル訓練過程において畳み込み層およびプーリング層の経路数や階層設定を調整している。そのため、AI アルゴリズムやモデルを調整して、特定の応用分野の技術的課題を解決し、有利な効果を得るものであり、進歩性を有すると判断されている。
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【例 18】 船舶の数を識別する方法 請求項: 分析と結論: |
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【例 19】 鉄スクラップの等級を分類するためのニューラルネットワークモデルの構築方法 請求項: 鉄スクラップの等級を分類するためのニューラルネットワークモデルの構築方法であって、前記モデルは貯蔵された鉄スクラップの等級分類に用いられ、
上記のような畳み込み層およびプーリング層の経路数や階層設定の調整等内容は、他の引用文献に開示されておらず、当該技術分野における公知常識でもない。従来技術には、全体として、上記引用文献1を改良して本発明に至るための示唆がないため、請求項に記載された発明は、進歩性を備える。 |
④実施可能要件に関する審査基準・審査事例の追加
AI 等関連発明の明細書の記載要件について、発明が AI モデルの構築または学習に関わる場合には、一般に、明細書において、モデルに必要なモジュール、階層構成または接続関係、訓練に必要な具体的ステップやパラメータ等を明記載する必要があることが規定された。更に、具体的な技術分野や場面に AI モデルやアルゴリズムを応用する発明に関しては、一般に、明細書において、モデルまたはアルゴリズムがどのようにその技術分野や応用場面と結びついているか、アルゴリズム又はモデルの入出力データがどのように設定されているかを明確に記載することで、その内在的な関連性を示し、当業者が明細書の記載内容に基づいて当該発明を実施可能とする必要があることが規定された。
これらは、AI 等関連発明の明細書のブラックボックス問題を解決するための規定である。
また、これに関連し、以下の2つの審査事例が追加された。
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【例 20】 顔特徴の生成方法 請求項:
明細書の関連段落: 分析及び結論: |
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【例 21】 生物情報に基づく癌予測方法 請求項: 大規模な人サンプル集合を構築するステップであって、前記サンプルは、同一個人についての血液一般検査結果、血液生化学検査結果、および顔画像を含むステップと、
分析及び結論: |
(7)ビットストリームを含む発明の審査基準・審査事例の追加
改正案では、上記(6)で紹介した第二部分第九章第6節の「人工知能等に関する特許出願の審査関連規定」に続く第7節として、「ビットストリームを含む発明の審査基準」が設けられた。
①保護適格性に関する審査基準の追加
まず、保護適格性について、単純なビットストリームの請求項や、請求項の主題以外の実質的な全ての内容が単純なビットストリームに過ぎない請求項は、専利法第 25 条第 1 項第 2 号の「知的活動のルール及び法則」に該当し、特許保護の対象にならないことが規定された。
これに対し、デジタル映像のエンコード/デコード分野において、ある特定のビットストリームを生成する動画エンコード/デコード方法が、専利法第 2 条第 2 項に規定された「発明」に該当する場合、当該エンコード/デコード方法によって特定される、当該ビットストリームを記録・伝送する方法や、それを記録するコンピュータ可読記録媒体は、記録・伝送リソースの最適な配置などを実現し得るものであるため、専利法第 2 条第 2項に規定の「発明」に該当し、特許保護の対象となることが明記された。
②実施可能要件に関する審査基準の追加
特定の動画エンコード/デコード方法によって生成されたビットストリームを含む発明特許出願の明細書は、当該特定の動画エンコード/デコード方法について、当該技術分野の技術者が実施できる程度に明確かつ完全に説明しなければならないことが規定された。また、当該ビットストリームの保存または伝送方法、ならびに当該ビットストリームを保存するコンピュータ可読記録媒体を保護対象とする場合には、明細書においてそれに対応する説明を行い、請求項を裏付ける必要があることも規定された。
③請求項の記載方法に関する審査基準の追加
特定の動画エンコード/デコード方法によって生成されたビットストリームを含む発明特許出願は、方法、装置、およびコンピュータ可読記録媒体の請求項として作成することができること、また、一件の出願の中では、一般に、それらの請求項を基礎とし、当該特定の動画エンコード/デコード方法の請求項を引用する、またはその全ての特徴を包含する形式で、これに対応する保存方法、伝送方法、および/またはコンピュータ可読記録媒体に関する請求項を作成するべきことが規定された。
改正案の説明によれば、上記の改正は、コンテンツの生成、保存、伝送など、複数の段階や主体が存在するストリーミングメディア業界において、各段階に関連する発明を適切に保護することを目的としている。
更に、改正案では、「動画エンコード方法」の発明を例に、許容される請求項の具体例が示された。
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【例1】
【請求項4】 【請求項5】 |
【PCT 出願関連】
(8)国内移行時の優先権譲渡証への署名者の明確化
PCT国際出願時に行われた優先権主張について、現在の審査基準では、当該 PCT 出願の出願人が、優先権基礎出願の出願人に含まれず、PCT 出願の出願人が優先権基礎出願の出願人の譲渡・贈与等により優先権を得た場合、PCT 出願人は、中国国家知的財産局に対し、「譲渡人」が署名・捺印した証明書類を提出すべきであると規定している。改正案では、この署名・捺印者を、「譲渡人」から「優先権基礎出願の出願人全員」に修正した。この改正は、審査基準の他部分と記載を統一するものに過ぎず、実務の変更を伴うものではない。
【復審・無効審判関連】
(9)審決における記載の簡略化・省略
復審(拒絶査定不服審判)及び無効審判の審決について、現行の審査基準では、(1)書誌事項、(2)根拠条文、(3)審決の要点、(4)案件の経緯、(5)審決の理由、(6)結論、(7)添付図面の各部分を含むこと、更に、拒絶査定不服審判での取消審決では、(4)の案件の経緯部分を簡略化又は省略してよいことが規定されている。改正案では、「通常は、(1)~(7)の各部分を含むが、状況により簡略化又は省略してよい」と、より合議体の裁量にまかせた審決の記載の簡略化・省略ができることが規定された。
(10)他人名義での無効審判請求の禁止
無効審判請求の不受理事由として、「無効審判請求が審判請求人の真実の意思表示でない」場合が追加された。改正案の説明によれば、これは、実際に他人名義で無効審判請求がなされた事案を受けて追加された項目であり、このような行為は、信義誠実の原則に反し特許無効制度の公信力や市場の競争秩序を損なうものとされている。しかしながら、本要件が当事者の申し立てにより審理されるか、合議体の職権により審理されるか、どの程度まで審理されるか、改正後もいわゆるダミーによる審判請求は可能か等については、不明な点が多い。
(11)無効理由の「一事不再理」範囲の明確化
既に無効審判の審決が出された無効理由と「同じ理由」だけでなく、「実質的に同じ理由」に基づく無効審判請求についても、一事不再理により不受理処分とすることが規定された。「実質的に同じ理由」に基づく無効審判請求の例として、改正案の説明には、無効理由及び証拠を形式的に調整、並び替えるだけで、法的事実は実質的に同じ状況が挙げられている。これも、審査リソースの節約と効率化を目的とする改正である。
(12)無効審判中の訂正に関する運用の明確化
無効審判中の訂正に際しては、全文差し替えページ及び訂正対照表の提出が必要であることが明記された。
更に、同一無効審判中に複数回の訂正書を提出し、そのいずれもが訂正の要件を満たす場合、最後に提出された訂正書を審理対象とし、それ以前の訂正書は放棄したものとみなすことが規定された。
【手続き関連】
(13)配列表のページ加算の廃止
所定の形式の電子データで提出された配列表については、明細書のページ数として計算せず、出願料金のページ加算の対象とならないことが規定された。ただし、紙媒体で提出された配列表については、従来通りに追加費用の計算がされる点に注意すべきである。
上記の変更と合わせて、PCT 出願の国内段階のオフィシャルフィーの一覧から、「核酸配列および/またはアミノ酸配列表が明細書の独立した一部として 400ページを超える場合、その配列表は 400 ページとして計算する」との項目が削除された。
(14)オフィシャルフィー返還請求のルール変更
現在の審査基準において、専利局側から費用返還を行うと規定されている以下①~③の状況について、返還には当事者の請求が必要とのルールに変更された。理由は、費用返還の正確性及び迅速性を担保し、当事者の利益を守るためとされている。したがって、①~③の状況において、改正後は、当事者が請求を行わなければオフィシャルフィーが返還されない点に注意が必要である。
①実体審査段階移行通知発行前に出願がみなし取り下げとなった場合、又は出願人による取下書が認められた場合、当事者は審査請求料の返還を請求できる。
②当事者は、特許権利期間の満了後、又は権利全部無効の審決の公告後に収めた年金について、返還を請求できる。
③権利回復請求が却下された場合、当事者は、既に納付した権利回復請求料及び関連費用の返還を請求できる。
(15)加速審査の明文化
出願人の請求により、出願に対して優先審査、加速審査、又は遅延審査を行ってよいことが明記された。
また、知的財産権保護センター、迅速権利維持センターでの予備審査合格後に行われた特許出願については、加速審査に関する規定を満たす場合、加速審査を行ってよいことも規定された。
この優先審査、加速審査については、中国国内の出願人を中心に利用が拡大しており、本改正は、これを明確に規定したものである。
(16)国際出願の登録証への記載内容の明確化
国際出願及びその分割出願の登録証に記載される、「出願時の発明者・設計者・出願人」は、「国際出願の中国国内移行時又は分割出願提出時の発明者・設計者・出願人」であることが明記された。
(17)特許期間調整の延長期間算定ルールの一部変更
専利法実施細則第 78 条第3項第1号では、「実施細則第66条の規定に従い専利出願書類を補正した後に専利権が付与された場合の、復審手続きに起因する遅延」は、「合理的な遅延」期間であるため、特許期間延長の対象にならないと規定している。
改正案では、復審中に補正しなかった場合でも、審判請求人が拒絶査定受領後に提示した新たな理由や証拠により拒絶査定が覆された場合には、復審に要した期間が、特許期間延長の対象にならないことが明記された。ただし、出願人が復審段階で、審査段階の手続きの違反を申し立て、合議体が当該手続きの違反を理由に拒絶査定を取り消した場合には、「新たな理由」とはみなされない。
4.最後に
本改正案については、6 月 15 日までに寄せられたパブリックコメントに基づいて再度の調整が行われ、調整後の最終的な改正内容が発表される見込みです。発表の時期は未だ明らかにされていませんが、弊所では、新たな情報が入り次第、皆様に報告させて頂きます。