Newsletter Vol. 21(2023年3月)

専利審査指南改正草案(再意見募集稿)/引用による補充の声明/商標としての使用を禁止する標章に関するガイドライン【中国】【特許】【商標】

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Shangcheng Newsletter Vol.21(2023.03)

 

<中国知財ニュース>
国家知識産権局が 2022 年の知的財産権統計データを発表
PCT 国際出願中国国内段階移行時の「引用による補充の声明」の提出方法について
「商標としての使用を禁止する標章に関するガイドライン」の紹介


<特集>
特許審査指南改正草案(再意見募集稿)のご紹介

 

<中国知財ニュース>
国家知識産権局が 2022 年の知的財産権統計データを発表

 2023 年 1 月 16 日、国家知識産権局は、2022年の中国の専利(特許・実用新案登録・意匠登録)、商標、地理的表示及び集積回路に関する主な統計データを発表した。
 2022 年の発明特許の登録件数は合計 79.8 万件、実用新案登録の登録件数は 280.4 万件、意匠登録の登録件数は 72.1 万件であった。PCT 国際特許出願の受理件数は 7.4 万件、中国出願人によるハーグ協定に基づく意匠登録の国際出願件数は合計 1,286 件であった。
 2022 年末までの中国の有効な発明特許の件数は 421.2 万件で、そのうち中国国内(香港・マカオ・台湾を除く)の有効な発明専利の件数は 328.0 万件であった。2022 年の専利不服審判の結審件数は 6.3 万件で、無効審判の結審件数は 0.79 万件であった。


 2022 年の商標登録件数は合計 617.7 万件で、国内出願人によるマドリッドプロトコルに基づく商標国際出願件数は 5,827 件であった。商標異議申立の結審件数は 16.9 万件で、商標の各種審判事件の結審件数は 41.2 万件であった。2022 年末までの中国における有効商標登録件数は 4267.2 万件となっている。
 

 2022 年の一年を通して承認された地理標識製品は 5 件で、地理的表示標識の専用マークの使用が許可された企業は 6,373 社であった。登録許可された地理的表示標識を団体商標、証明商標として登録した件数は 514 件であった。
 

 2022 年の集積回路配置設計登録件数は 9106件で、2022 年末までに中国で登録された集積回路配置設計の総計は 6.1 万件となっている。

 

 2022 年、全国の知的財産権に関する機関が処理した専利(特許・実用新案登録・意匠登録)権侵害紛争に関する行政処分件数の合計は 5.8 万件であった。また、専利(特許、実用新案登録、意匠登録)及び商標について質権設定した項目は 2.8万件で、質権を設定した融資総額は 4868.8 億人民元に達し、前年に比べ 40%以上増加した。

 

PCT 国際出願中国国内段階移行時の「引用による補充の声明」の提出方法について

 2022 年 12 月 7 日、国家知識産権局は一部の特許業務の処理方法について調整を行った。その中のひとつが、引用による補充に関するものである。2023 年 1 月 11 日より、PCT 国際出願について、国際段階において引用による補充が含まれる場合は、国内段階への移行手続を行う際に、国際出願の中国国内段階移行声明を提出すると同時に、以下の(1)及び(2)の内容を明記した意見陳述書を提出しなければならないものと規定された。


(1)提出する中国語訳文に、引用により補充する要素又は部分が含まれるかどうか。
(2)引用により補充する要素又は部分が含まれ、中国に対する出願日の補正を請求する場合は、引用により補充する要素又は部分の明細書(第何頁)、請求項(何項)、図面(第何頁)における位置と国際段階で引用による補充を提出した日時を明記しなければならない。

 

 出願人が国内段階移行手続を行う際に中国に対する出願日の補正を請求しなかった場合は、後続の手続において、中国に対する出願日の補正を請求するという方法によって引用により補充する要素又は部分を保留することはできない。

 

「商標としての使用を禁止する標章に関するガイドライン」の紹介

 2023 年 1 月 19 日、国家知識産権局は、市場主体が参考にするための「商標としての使用を禁止する標章に関するガイドライン」(以下、「ガイドライン」を称する)を公布した。「ガイドライン」では、現行の「商標法」第 10 条第 1 項に規定された「商標として使用してはならない標章」(以下、「使用禁止標章」という)について詳しく説明及び例示がなされ、また「使用禁止標章」(つまり「絶対に使用してはならない標章」)を登録出願又は使用した場合に負うべき法的責任が明らかにされた。「ガイドライン」の公布は、商標登録出願と使用の過程において信義誠実の原則に従うよう市場主体を導くことで、社会秩序を守るという重要な意義を有する。


 「商標法」第 10 条第 1 項の適用範囲及び同項に規定される使用が禁止される状況について、「ガイドライン」では次の通り規定されている。

 

◇まず、商標法第十条第一項第(一)号から第(五)号では、特定保護標章が規定され、これらを商標として登録・使用することが禁止されている。具体的には、中華人民共和国の国名・国旗・国章・国歌・軍旗・軍章・軍歌・勲章、中央国家機関の名称・標識・所在地に関する特定の地名又は標章性を有する建築物の名称・図形等、外国の国名・国旗・国章・軍旗等、各国政府よりなる国際組織の名称・旗・徽章等、実施管理し保証することを表す政府の標章又は検査印、「赤十字」「赤新月」の名称・標章が含まれる。

 

 「商標法」第十条第一項第(一)号から第(五)号の規定に基づき、市場主体は上記標章と同一又は類似する標章を商標として登録又は使用することを避けなければならない。同「ガイドライン」では、上述の標章を登録及び使用してはいけない理由について説明されているだけでなく、上述の標章に類似する標章について具体例も示されており、市場主体の本条項に対する理解を深めるために役立つものとなっている。

◇また、商標法第十条第一項第(六)号から第(八)号では、公序良俗等の公益を損なう標章を商標として登録・使用することを禁止すると規定している。主には、民族差別的な性質を帯びたもの、欺瞞性を帯び、公衆に商品の品質等の特徴又は産地について誤認を生じさせやすいもの、その他の悪影響を及ぼすものが含まれる。


 商標法第十条第一項第(六)号から第(八)号の規定に基づき、市場主体は上記標章を商標として登録又は使用することを避けなければならない。これについて、「ガイドライン」では詳しく説明され、標章の具体例も挙げられている。具体的な内容は以下のとおりである。


1.民族差別的な性質を帯びた標章は商標として登録及び使用してはならない
 「ガイドライン」の規定によると、「民族差別的な性質」とは、標章の中に特定の民族を醜悪化したり、貶めたり、その他の当該民族を差別的に扱う内容が含まれていることを指す。


2.欺瞞性を帯び、公衆に商品の品質等の特徴又は産地について誤認を生じさせやすい標章は、商標として登録・使用してはならない
 「ガイドライン」の規定によると、「欺瞞性を帯び」とは、標章がその指定商品又は役務の品質等の特徴又は出所について、その固有の程度を超えて、又は事実に反して表示され、公衆に商品又は役務の品質等の特徴又は出所について誤認を生じさせやすいものを指す。
 民族差別的な性質を帯びた標章として、よく見られる標章のタイプとしては、以下が挙げられる。

 

1)商品又は役務の品質、機能、用途、原料、内容、重量、数量、価格、技術などの特徴について公衆に誤認を生じさせやすい標章

2)公衆に商品又は役務の産地・出所について誤認を生じさせやすい標章

3)公衆に誤認を生じさせやすいその他の標章

 「ガイドライン」では、標章が欺瞞性を帯びた状況に該当するか判断するための基準と例外的な状況についても明らかにされている。まず、関連する標章が本項に規定される状況に該当するかを判断するためには、指定商品又は役務自体の特徴と組み合わせて具体的に分析しなければならないものとされている。そして、もしも公衆が日常生活における経験等に基づき、標章の指定商品又は役務の品質等の特徴や出所について誤認を生じない場合、欺瞞性を帯びた状況には該当しないものとされる。

3.「悪影響」を有する標章は、商標として使用及び登録してはならない
 「ガイドライン」では、「社会主義の道徳、風習を害し、又はその他の悪影響を及ぼすもの」に該当する状況として、標識自体に「悪影響」が含まれる場合、標章自体には「悪影響」は含まれないが、特定の商品又は役務を指定して使用することで容易に「悪影響」が生じる場合、特定の出願人が登録又は使用することで容易に「悪影響」が生じる場合等があげられている。「悪影響」を及ぼす標章として、よく見られる標章のタイプとしては、以下が挙げられる。


1)社会主義の道徳、風習を害する標章

 具体的には、テロ、暴力、わいせつ、卑猥、賭博、封建的な迷信などの非文明的で、低俗で、格調が低く、若しくは関連する公衆や特定の集団にネガティブでマイナスな影響を与え、又は誹謗する意味を持つ語彙若しくは図案及び上述の語彙若しくは図案と字形・発音等が類似する標章。


2)政治面の悪影響を有する標章

 具体的には、以下のような標章が含まれる。国家の主権、尊厳、イメージを損ない、又は国家の安全を害し、国家の統一を破壊する標識。中国共産党と国家の指導者及び公衆に知られているその他の国家、地域又は政治的な国際機関の指導者の氏名と同一又は類似する標章。中国共産党の重要な理論成果、科学的論断、政治的論述などと同一又は類似するもの、又は国家戦略、国家政策、中国共産党と国家の重要な会議などと同一又は類似する標章。政治的な意味を持つ事件、場所、数字などの標識。テロリズムの組織、カルト教団、暴力団組織又は暴力団のような性質を有する組織の名称若しくは代表的な記号若しくはその指導者の氏名若しくは代表的な符号等と同一又は類似する標章。その他の政治面の悪影響を有する標章。

3)経済、文化、民族、宗教、社会に容易に悪影響を及ぼす標章

 具体的には、以下のような標章が含まれる。各国の法定通貨の名称又は記号と同一又は類似する標章。標準的でない漢字又は標準的ではない成語の使い方が含まれる標章。民族、人種の尊厳又は感情を害する標章。宗教の信仰、宗教的感情又は民間の信仰を害する標章。中国の各党・政府機関、軍隊、警察、軍事単位、党派、政府機関、社会団体などの単位又は組織の名称、略称と同一又は類似する標章、及び関連する職務、職級、肩書き、バッジなどと同一又は類似する標章。中国全体の発展戦略と密接な関係がある国家級新区又は国家級重点開発区域の名称と同一又は類似する標章、及び中国の政治、経済、文化、社会の発展と密接な関係がある国家レベルの重大工事、重大科学技術プロジェクトなどの名称と同一又は類似する標章。重大な自然災害、重大事故、公衆衛生事件、社会安全事件などと同一又は類似する標章若しくは関連する特有の語彙。英雄烈士の氏名、肖像又はそれらに関連する事跡、精神、スローガンを含む標章。政治、経済、文化、民族、宗教などに関連する公衆の人物の氏名と同一又は類似する標章。中国の経済、文化、民族、宗教、社会公共利益及び公共秩序に容易に「悪影響」をもたらすその他の標章。

 このように、「ガイドライン」では、「商標法」第 10条第 1 項に規定される使用が禁止される状況について詳細に説明され、具体例が挙げられていることから、市場主体の関連する条項に対する理解を深めることができ、商標としてどのような文字や図形等を使用・登録することができないかがより明確にされた。

 

 また、「ガイドライン」では、市場主体が「使用禁止標章」を登録出願又は使用する場合に負うべき法的責任についても明確にされている。まず、関連する標章の登録出願が「商標法」第 10 条第 1 項に違反する場合、拒絶査定が出される。また、既に登録された商標であっても無効とされる可能性がある。さらに、悪意のある商標出願に該当する場合は、警告、罰金等の処罰を受けることになる。本「ガイドライン」で挙げられた標章に関連する商標を使用した場合、法のもと制止され期限を定めて是正するように求められると同時に通報・罰金等の処罰も受けることになる。

 

 今回の「ガイドライン」の公布は、自らの商標戦略に支障をきたしたり、処罰を受けたりしないためにも、自社ブランドのロゴを設計する際には使用禁止標章を使用してはならないのだということをさらに踏み込んで市場主体に認識させるものとなった。また、使用禁止標章を登録出願・使用したときに遭遇するリスクを商標代理機構が委任者に明確に伝えることで、委任者の損失を可能な限り避けるよう、商標代理機構が履行すべき義務についても更に明確にされた。


<特集>
特許審査指南改正草案(再意見募集稿)のご紹介

 改正中国特許法は 2021 年 6 月 1 日より施行されており、それに合わせて特許法実施細則の改正作業も進められている。

 2022 年 10 月末に、国家知識産権局は 2020 年11 月と 2021 年 8 月に公表された「特許審査指南改正草案」をベースにして、「特許審査指南改正草案(再意見募集稿)」(以下「再意見募集稿」とする)を作成した。今回の意見募集稿の内容は、主にこれまでの 2 回の意見募集稿に寄せられたパブリック意見を反映して改善したもので、特許法及びその実施細則に関する規定に合わせてより詳細な内容について行われる改正である。

 ここでは、「再意見募集稿」の中から、特許権存続期間の補償、医薬品の特許権存続期間の補償、優先権の回復、優先権主張の追加又は訂正、引用による補充、および意匠の国際登録出願に関する内容について以下のとおり紹介する。

一. 特許権存続期間の補償について(第 5 部分第9 章第 2 節)
 「特許法」第 42 条第 2 項には、「発明特許の出願日から起算して満4年、かつ実体審査請求日から起算して満3年後に発明特許権が付与された場合、国務院特許行政部門は、特許権者の請求に応じて、発明特許の権利付与の過程における不合理な遅延について特許権存続期間の補償を与える。但し、出願人に起因する不合理な遅延は除く。」と規定されている。


 「特許法」及び特許法実施細則(改正中)の改正内容に合わせるため、「再意見募集稿」では、「請求の提出」、「補償期間の決定」、「特許権存続期間補償請求の審査・許可」、「登録および公告」などの面から規定がなされている。

 

1.請求の提出
 特許権存続期間補償請求は、特許権者又は特許権が共有に係る場合の共有者の代表が権利付与公告日から 3 ヶ月以内に特許庁に請求し、且つそれに応じた費用を納付しなければならない。特許代理機構に委任している場合、特許権存続期間補償請求手続も特許代理機構経由で行わなければならない。


2.補償期間の確定
特許権存続期間の補償が与えられる場合、補償期間は発明特許権の付与過程において不合理な遅延が生じた実際の日数に基づいて計算する。この「実際の遅延日数」は、発明特許権の付与過程において生じた不合理な遅延期間から出願人自身に起因する不合理な遅延期間を差し引いて算出する。


2.1特許権の付与過程における不合理な遅延期間
 権利付与過程における不合理な遅延期間とは、発明特許の権利付与公告日から「発明特許の出願日から 4 年を経過した日」までの期間で、かつ実体審査請求日から 3 年を経過した日以降の期間を指す。国際出願の権利付与過程における不合理な遅延期間とは、発明特許の権利付与公告日から「国際出願が中国国内段階に移行した日」までの期間で、分割出願の権利付与過程における不合理な遅延期間とは、分割出願の出願日から 4 年を経過した日までの期間でかつ実体審査請求日から3 年を経過した日までの期間を指す。

 

 「再意見募集稿」によると、国際出願の出願日とは国際出願が中国国内段階に移行した日、分割出願の出願日とは分割出願を提出した日、実体審査請求日とは実体審査請求を提出し且つ発明特許出願の実体審査請求費用を満額納付した日を指す。実体審査請求時に特許出願がまだ公開されていなかった場合、「実体審査請求日から 3 年を経過した日」は、公開日から起算すべきである。

 

 この計算方法を分かりやすく説明するために、ここでは「補償基準日」という概念を用いる。まず、出願日に 4 年を加算した日、または、実体審査請求日に 3 年を加算した日のうち、遅い方の日を「補償基準日」とすると、権利付与の過程における不合理な遅延が生じた実際の日数は、以下の式で求めることができる。(算出結果がゼロ又はマイナスの場合は、特許権存続期間の補償は与えられない。)

 

「不合理な遅延に係る実際の日数」=「発明特許の権利付与公告日」-「補償基準日」 -「出願人に起因する不合理な遅延期間」-「権利付与過程における不合理な遅延に該当しない期間」


 なお、「再意見募集稿」では、権利付与過程における不合理な遅延に該当するものとして、手続の中断、保全措置、行政訴訟や特許出願書類の補正後に特許権が付与された場合の復審手続などのいくつかの状況が挙げられている。

 

2.2出願人に起因する不合理な遅延期間
 「再意見募集稿」では、出願人に起因する不合理な遅延に該当する状況として、具体的に次のように規定されている。


(1)指定された期間内に特許庁の発行した通知に応答しなかったことにより生じた遅延。遅延期間は、指定された期限日から実際の応答日までとする。
(2)遅延審査を請求した場合の遅延。遅延期間は、実際の遅延審査の期間とする。
(3)引用による補充により生じた遅延。遅延期間は、特許法実施細則第 45 条に基づき生じた遅延期間とする。
(4)権利回復を請求した場合の遅延。遅延期間は、本来の期限日から権利回復を認める権利回復請求審査許可通知書の発行日までとする。ただし、当該遅延が特許庁によるものであることを証明できる場合を除く。
(5)優先日から 30 ヶ月以内に中国国内段階移行手続を行った国際出願について、出願人が早期処理を請求しなかったことで生じた遅延。遅延期間は、中国国内移行日から優先日の 30 ヶ月後までの期間とする。

 

3.特許権存続期間補償請求の審査・許可
 補償請求の審査と許可について、「再意見募集稿」では、審査した上で特許権存続期間の補償請求が期間補償の要件を満たさないと判断された場合、特許庁は、意見陳述及び/又は書類補正の機会を少なくとも 1 回請求人に与えなければならず、その後も依然として期間補償の要件を満たさない場合は、期間の補償を与えない旨の決定を下さなければならないと規定されている。

 また、審査した上で、特許権存続期間の補償請求が期間補償の要件に合致すると判断した場合は、特許庁は、期間の補償を与える旨の決定を下し、補償期間の日数を告知し、且つ関連事項を特許登記簿に登録して特許公報で公告しなければならないと規定されている。

 現在、「特許法実施細則」および「特許審査指南」の正式版はまだ公表されていないが、「再意見募集稿」には、特許権存続期間の補償に関する大まかな枠組みが示されている。出願人及び特許権者は、現行「特許法」に基づき「特許法実施細則」の改正案および本「再意見募集稿」の関連規定を参照すれば、登録された特許が特許権存続期間の補償対象になるか分析し、得られる補償期間の日数を推算することができる。

二、医薬品に係る特許権の存続期間の補償(第 5部分第 9 章第 3 節)
 「特許法」第 42 条第 3 項には、「新薬の上市承認を受けるための承認審査に費やした時間を補償するために、中国での上市承認を受けた新薬に関連する発明特許について、国務院特許行政部門は、特許権者の請求に応じて特許権存続期間の補償を与える。補償期間は 5 年を超えないものとし、新薬が上市承認された後の特許権の有効期間の合計は 14 年を超えないものとする。」と規定されている。

1.医薬品に係る特許権存続期間補償の適用対象および範囲
 「特許法」第 42 条第 3 項には、医薬品特許権存続期間補償の適用対象を「中国での上市承認を受けた新薬に関連する発明特許」としているが、「新薬に関連する発明特許」について明確な定義はなされていない。「再意見募集稿」によると、「国務院医薬品監督管理部門により上市承認された革新的医薬品及び規定に合致する改良型新薬」について、特許庁は、特許権者からの請求に応じて、要件に合致する発明特許に対して、医薬品特許権存続期間の補償を与え、特許権の有効期間内に当該新薬の上市承認を受けるための審査に要する期間を補填することができるものとされている。


 上述の「革新的新薬」及び「改良型新薬」については、薬物活性物質の製品に係る発明特許、調製方法に係る発明特許又は医薬用途に係る発明特許に対して特許権の存続期間の補償が与えられる。革新的新薬と改良型新薬の定義は、関連する法律法規に基づき国務院医薬品監督管理部門の関連規定を参照して確定するものとする。

 

 「医薬品登録管理弁法(2020)」の登録区分によると、「革新的新薬」には、生物学的製品の革新的新薬、化学医薬品の革新的新薬及び漢方薬の革新的新薬が含まれるものとされている。一方、国家医薬品監督管理総局の 2016 第 51 号公告の添付書類「化学医薬品登録区分改革業務方案」では、「革新的新薬品」という用語は第 1 類の新薬に関する分類の説明においてのみ記載されている。具体的には、「国内外でまだ上市していない革新的な新薬」に含まれる状況は「新しい明確な構造および薬理効果を持つ化合物を含み、臨床的価値がある原薬およびその製剤」と記載されている。

 また、「再意見募集稿」によると、規定を満たす改良型新薬は、(1)既知の活性成分をエステル化又は塩化した医薬品、(2)既知の活性成分を含む新適応症に対する医薬品、(3)ワクチン株を改良したワクチン、(4)新適応症が追加された生物学的製剤、(5)機能効果を追加した漢方薬に限定される。


2.医薬品に係る特許権存続期間補償請求の提出および補償の要件
 「再意見募集稿」によると、医薬品に係る特許権存続期間の補償請求は、特許権者又は特許権が共有に係る場合の共有者の代表が医薬品の中国での上市承認を受けた日から起算して 3ヶ月以内に特許庁に請求を提出し、かつ関連する証明資料及びそれに応じた費用を提出・納付しなければならない。特許代理機構に委任している場合、特許権存続期間の補償請求手続も特許代理機構経由で行わなければならない。特許権者と医薬品上市承認取得者とが一致しない場合、医薬品上市承認取得者の書面による同意を得なければならない。


 条件付き上市承認を取得した医薬品については、中国で正式な上市承認を取得した日から 3 ヶ月以内に特許庁に請求を提出しなければならない。ただし、補償期間の計算は条件付き上市承認を取得した日を基準とする。


 医薬品に係る特許権存続期間の補償を請求するにあたっては、以下の要件を満たさなければならない。


(1)補償を請求する特許権の付与公告日が、医薬品の上市承認申請が許可された日よりも早いこと。
(2)補償請求の提出時に、当該特許権が有効な状態にあること。
(3)当該特許が医薬品特許権存続期間の補償を受けたことがないこと。
(4)上市承認を取得した新薬に係る技術方案が、補償を請求する特許の特許請求の範囲に入っていること。
(5)1つの医薬品に複数の特許が同時に存在する場合、そのうちの 1 件の特許権についてのみ医薬品特許権存続期間の補償請求をすることができること。
(6)1 件の特許が同時に複数の医薬品に係る場合、1つの医薬品についてのみ当該特許に関する医薬品特許権存続期間の補償請求を提出することができること。

3.保護範囲についての審査及び補償期間の決定
3.1保護範囲
 保護範囲について、「再意見募集稿」では、新薬に係る技術方案は国務院医薬品監督管理部門が承認した新薬の構造・成分及びその含有量、承認した生産工程及び適応症に基づかなければならず、新薬に係る技術方案が特許請求の範囲に入らない場合、期間の補償を与えないものと規定されている。


 医薬品に係る特許権存続期間の補償期間内において、当該特許の保護範囲は、国務院医薬品監督管理部門が上市を承認した新薬のみに限られ、かつ、当該新薬の承認された適応症に係る技術方案のみに限られる。製品クレームの保護範囲は、承認された適応症に用いられる上市新薬製品のみに限られ、医薬用途クレームの保護範囲は上市新薬製品の承認された適応症のみに限られ、調製方法クレームの保護範囲は承認された適応症に用いられる市販新薬製品の国務院医薬品監督管理部門に登録された生産プロセスのみに限られる。

 

3.2補償期間の決定
 「再意見募集稿」によると、医薬品に係る特許権の補償期間の計算方法は、登録申請した新薬が中国で上市承認を取得した日から特許出願日を差し引き、さらに 5 年を差し引くことで算出するものとなっている。当該補償期間は 5 年を超えないものとし、かつ当該医薬品の上市許可申請承認後の特許権の合計有効期間は 14 年を超えないものとしている。


4.期間補償請求についての審査・許可
 請求人が特許庁に医薬品に係る特許権存続期間の補償請求を提出し、特許庁で審査した上で医薬品に係る特許権存続期間の補償請求が期間補償の要件を満たさないと判断された場合、特許庁は少なくとも 1 回の意見陳述及び/又は書類補正の機会を請求人に与えなければならない。その後も依然として期間補償の要件を満たさないかった場合は、期間の補償を与えない旨の決定を下すものとする。審査した上で医薬品に係る特許権存続期間の補償請求が期間補償の要件を満たすと判断された場合、特許庁は期間の補償を与える旨の決定を下し、補償期間の日数を告知し、且つ関連する事項を特許登記原簿に登録して特許公報で公告しなければならない。


 医薬品に係る特許権存続期間の補償は請求の原則に従い、特許権者が特許庁に請求を提出してはじめて相応の補償期間を得ることが可能となり、請求を提出していない、または規定の期限内に請求を提出していない特許権者は、医薬品に係る特許権存続期間の補償は得られない。

 請求人が特許庁に対して医薬品に係る特許権存続期間の補償請求を提出し、特許庁が審査した上で医薬品に係る特許権存続期間の補償を与えるべきと判断した場合において、特許権者が特許権存続期間の補償請求をすでに提出してはいるものの、特許庁からまだ審査許可決定が出されていない場合、審査官は特許権存続期間の補償請求の審査許可決定が出された後で、医薬品に係る特許権存続期間の補償期間を確定しなければならない。特許権者が特許存続期間の補償請求を提出しておらず、かつ権利付与公告日から起算して 3ヶ月の期間が満了していない場合、審査官は特許存続期間の補償請求の期間が満了した後に、医薬品に係る特許存続期間の補償を与える期間を決定しなければならない。ただし、特許権者が特許存続期間の補償請求を放棄することを明示した場合を除く。


三、特許協力条約(PCT)に関連する規定
 優先権の回復、優先権主張の追加・訂正、および、特許請求の範囲・明細書やその他の内容の引用による補充は、特許協力条約(PCT)における優先権又は出願書類の救済に係る規定であり、中国は、これまでに優先権の回復、優先権主張の追加・訂正、及び引用による補充については留保していたが、「特許法実施細則」の改正草案に合わせるために、「再意見募集稿」にはこれらの救済措置が導入された。


1.優先権の回復(第 1 部分第 1 章第 6.2.6 節、第 3 部分第 1 章第 5.2.5 節)
 優先権の回復とは、先の出願の出願日から起算して 12ヶ月の期間が満了した後に、後の出願が提出された場合、国務院特許行政部門が公開準備を完了する前であって、期間が満了した日から起算して 2 ヶ月以内であれば、出願人は証明する資料を提出することで優先権の回復を請求することができるということである。国際出願について、国際段階においてすでに受理官庁が優先権の回復が承認されている場合、特許庁は通常再度これを問うことはせず、国際出願が国内段階に移行する際に出願人が再度回復請求を提出する必要はない。国際段階において出願人が優先権の回復を請求せず、又は回復請求を提出したが受理官庁が承認しなかった場合、出願人に正当な理由がある場合は、移行日から起算して 2 ヶ月以内に優先権の回復請求を提出することができる。
 優先権主張の追加又は訂正を行う状況に該当する場合は、優先権の回復の規定を適用しない。また、出願人が優先権の回復請求期間内に手続を行わなかった場合は、実施細則第 6 条第 1 項、第 2 項に基づき回復を請求することはできない。

 

2.優先権主張の追加又は訂正(第 1 部分第 1 章第 6.2.3 節)
 優先権主張の追加・訂正とは、出願人が優先権を主張した場合、優先日から16ヶ月以内又は出願日から 4 ヶ月内で、かつ国務院特許行政部門が公開準備を完了する前であれば、優先権主張の追加又は訂正を請求することができることをいう。

 出願人が優先権主張の追加又は訂正を請求する場合、出願時に優先権を主張するとともに、規定された期間内に優先権主張の追加又は訂正についての請求書を提出しなければならない。優先権の回復に該当する場合は、優先権主張の追加または訂正の規定は適用されない。また、出願人が優先権主張の追加または訂正の請求期間内に手続を行わなかった場合、実施細則第 6 条第 2 項に基づき回復を請求することはできない。

3.引用による補充(第 1 部分第 1 章第 4.7 節)
 引用による補充とは、後の出願が提出された後、出願日を変更しないという前提で、先の出願(即ち、優先権を主張する基礎出願)の特許請求の範囲、明細書の全部又は一部の内容を出願書類に補充して追加提出することをいう。つまり、この場合、引用により補充された内容は、出願当初に提出された出願書類の一部と見なされる。引用による補充には、(1)脱落した特許請求の範囲又は明細書を追加提出することと、(2)誤って提出された特許請求の範囲、明細書、または欠落した若しくは誤って提出された特許請求の範囲、明細書の一部の内容を追加提出することの 2 種類が含まれる。


 出願人は、特許出願の提出日から 2 ヶ月以内又は国務院特許行政部門が指定した期間内に引用による補充に係る声明を提出し、関連書類を追加提出しなければならない。


 実施細則第 36 条及び第 37 条に基づく優先権を回復、優先権主張を追加又は訂正する状況に該当する場合、引用による補充は適用されない。分割出願については、引用による補充が適用されない。また、出願人が引用による補充に関する期間内に手続を行わなかった場合、実施細則第 6 条第2 項に基づき回復を請求することができない。

四、意匠の国際登録出願(第 6 部分)
 「工業製品意匠の国際登録に関するハーグ協定」(1999 年改正協定)(以下、「ハーグ協定」とする)は、中国では 2022 年 5 月より正式に発効した。「ハーグ協定」の発効による変化に対応するために、「再意見募集稿」では、「意匠の国際登録出願」に係る第 6 部分が新設され、意匠の国際登録出願の事務処理に係る第 1 章と、国際意匠出願の審査に係る第 2 章の計 2 章が規定された。ここでは、意匠の国際出願の提出、事務処理及び意匠の国際出願の国内段階における審査原則や審査手続などの規定がさらに細分化されている。

 出願人は、ハーグ協定に基づく 2 つのルート(①出願人がWIPOの国際事務局に直接出願するルート、②締約国の特許庁を通じて間接的に出願を提出するルート)を通じて意匠の国際登録出願を提出することができる。

 新設された第 6 部分には、上記の 2 つのルートにおける国際出願の提出から権利付与後の管理までの全過程が含まれており、意匠国際登録出願の事務処理と審査手続が初めて具体的に規定された。ハーグ協定の要求を満たすために、多くの規定や手続が現行の意匠出願の業務規定とは異なるものとなっている。

 また、2023 年 1 月 5 日、国家知識産権局は、「ハーグ協定加入後の関連業務処理に関する暫定弁法」第 511 号公告を公表した。2023 年 1 月 11日から同暫定弁法が施行されたことに伴い、2022年 5 月 5 日から施行された「ハーグ協定加入後の関連業務処理に関する暫定弁法」(国家知識産権局第 481 号公告)は廃止された。

 

 「再意見募集稿」が正式に公表されるまでの期間においても、申請の形式、申請日の決定、審査、優先権、分割などの手続について規定された上記の暫定弁法は、現行の基準として関連業務において実行されている。

 

五、結び
 今回の「再意見募集稿」の意見募集期間は2022 年 12 月 15 日にすでに終了し、現時点において新たな改正情報については確認されていない。本指南に対する意見募集はすでに複数回実施されたため、現在は最終的な内容の調整と確認の段階にあるものと考えられる。「再意見募集稿」改正の最新の進展について、引き続き動向を注視し、情報が入り次第、情報共有していきたいと思う。

 

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