商標審査審理指南/ 重大な専利権侵害紛争の行政裁決弁法 の解釈/医薬品専利紛争早期解決メカニズムにおける行政裁決弁法【中国】【特許】【商標】【ジェネリック】
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Shangcheng Newsletter Vol.20(2022.01)
<中国知財ニュース>
●国家知識産権局が 2021 年の知的財産権統計データを発表
●国家知識産権局が第 1 群の医薬品専利紛争早期解決メカニズムによる行政裁決請求を受理
●「重大な専利権侵害紛争の行政裁決弁法」の解釈
<特集>
●商標審査審理指南が 2022 年 1 月 1 日より施行
<中国知財ニュース>
●国家知識産権局が 2021 年の知的財産権統計データを発表
2022 年 1 月 7 日、国家知識産権局は、2021 年の中国の知的財産権に関するデータを発表した。
2021 年の発明特許の登録件数は合計 69.6 万件、実用新案の登録件数は 312.0 万件、意匠の登録件数は 78.6 万件であった。2021 年の専利出願件数に関する統計はまだ発表されていないが、PCT 国際登録出願の受理件数は 7.3 万件であった。図 1「2015 年~2021 年中国専利出願・登録件数」からわかるように、2021年の発明特許・実用新案及び意匠の登録件数は、全て前年よりも増加した。
また、2021 年の商標登録件数は合計 773.9 万件で、2020 年から 34.3%増加した。2021 年の商標出願件数の統計はまだ出ていないが、中国出願人によるマドリッドプロトコルに基づく商標国際出願件数は 5,928 件であった。図 2「2015 年~2021 年中国商標出願・登録件数」からは、2021 年は商標登録件数も前年より増加していることがわかる。
図 1:2015 年~2021 年中国専利出願・登録件数
図 2:2015 年~2021 年中国商標出願・登録件数
2021 年に新たに承認された地理標識製品は 99個で、新たに認定された地理的表示商標・団体商標は 477 件であった。2021 年の集積回路配置設計登録件数は 1.3 万件であった。
2021 年には、発明特許の平均審査期間が 18.5ヶ月までに短縮され、商標の平均審査期間も安定して 4 ヶ月程度を維持していた。
●国家知識産権局が第 1 群の医薬品専利紛争早期解決メカニズムによる行政裁決請求を受理
改正後の専利法は 2021 年 6 月 1 日より正式に施行されており、専利法第 76 条には、医薬品の発売許可申請人と、関連専利の権利者又は利害関係者とは、発売許可申請中の医薬品について専利権紛争が発生した場合、国務院専利行政部門に行政裁決を請求することができるものと規定されている。また、同年 7 月 5 日、国家知識産権局は「医薬品専利紛争早期解決メカニズムにおける行政裁決弁法」(以下、「弁法」と称する)を制定した。この専利法の改正及び上述の弁法の制定は、医薬品専利紛争の早期解決メカニズムに法的かつ制度的な根拠を提供するものとなった。
2021 年 10 月 27 日までに、専利権者又は医薬品の発売許可保有者によって提起された医薬品専利紛争行政裁決請求の受理件数は 23 件あり、国家知識産権局医薬品専利紛争早期解決メカニズム行政処分委員会は「弁法」に基づきこれらの請求について初歩審査を行い、受理条件を満たす12 件の請求について受理通知書を発行し、正式に立件した。
国家知識産権局は、関連する医薬品専利紛争早期解決メカニズムの行政裁決請求について法律及び規則に基づき審理を行う。同時に、国家医薬品監督管理部門及び人民法院との意思疎通及び協調を図り、この制度を円滑に実施し、医薬品専利権者の合法的権益を保護し、新薬の研究を奨励し、ジェネリック医薬品の発売後の専利権侵害リスクを低減しようとしている。
●「重大な専利権侵害紛争の行政裁決弁法」の解釈
国家知識産権局は、「重大な専利権侵害紛争の行政裁決弁法」(以下、「裁決弁法」と称する)を2021 年 5 月 26 日に公布し、本「裁決弁法」は2021 年 6 月 1 日より施行された。この「裁決弁法」の上位法は「専利法」であり、新「専利法」も同日に正式に施行された。
また、国家知識産権局は「裁決弁法」に関する解釈を 2021 年 10 月 13 日に公布した。「裁決弁法」に関する解釈の主な内容は次の通りである。
「裁決弁法」は 27 条からなり、重大な専利権侵害紛争の定義、立件条件と資料、証拠調査の権限、検査鑑定の規則、技術調査人の規定、関連する期限、執行と公開及び裁決のその他の手続等の内容について規定している。
(一)重大な専利権侵害紛争の定義
「裁決弁法」の第 3 条では、重大な公共利益にかかわるもの、業界の発展に重大な影響を及ぼすもの、省級行政区域にまたがる重大な事件及びその他の重大な影響を及ぼす可能性がある専利権侵害紛争を含む、重大な専利権侵害紛争に該当する状況について明確化されている。
以上の重大な専利権侵害紛争に該当する状況については、省、自治区、直轄市の専利業務を管理する部門によって初歩審査が行われ、関連する証明資料の発行又は請求資料の国家知識産権局への送付がなされる。送付消印日が行政裁決の請求日とされる。国家知識産権局は「裁決弁法」の立件規定に基づいて審査を行い、立件条件に合うものは立件する。重大な専利権侵害紛争に該当しない請求については、国家知識産権局は立件せず、請求人に管轄権のある地方管理専利業務の部門に処理を請求できることを通知する。
(二)立件の条件と資料
「裁決弁法」には、行政裁決の立件は第 3 条に述べた状況に該当し、かつ次の条件を具備しなければならないものと規定されている。(1)請求人が専利権者又は利害関係者であること。(2)明確な被請求人がいること。(3)明確な請求事項と具体的な事実、理由があること。(4)人民法院が当該専利権侵害紛争について立件していないこと。
「裁決弁法」ではさらに、請求人は請求書及び関連する証拠資料を提出しなければならず、被請求人の所在地や権利侵害の発生地となる省、自治区、直轄市の専利業務管理部門が発行した第 3 条に述べた状況に該当する証明資料も提出しなければならないものと規定している。
(三)証拠調査の権限
「裁決弁法」では提出した証拠について、「主張する者が挙証する」という原則に従うよう求められており、当事者は自分が提出した主張について証拠を提供する責任があるものとされている。当事者が客観的な原因によって証拠を収集できない場合には、初歩的な証拠と理由を提出し、書面により国家知識産権局に調査又は検査を申請することができる。また、「裁決弁法」では、調査員が調査あるいは検査する際に行使することができる職権についても規定されている。
(四)検査・鑑定の規則
専利権侵害紛争が複雑な技術問題にかかわり、検査・鑑定を行う必要がある場合、「裁決弁法」では、国家知識産権局は当事者の請求に応じて関係の機関に検査・鑑定を委託することができるものと規定されており、当事者が検査・鑑定を請求する場合、検査・鑑定の機関は当事者双方が協議して確定することができるものと明確化している。また、協議が成り立たない場合は、国家知識産権局が指定するものとしている。検査・鑑定意見は、調べを経ずに事件を認定する根拠とみなしてはならないものとした。
鑑定の費用について、契約がある場合はその契約に従うものとし、契約がない場合は、鑑定の費用は鑑定の申請側が先に支払い、結審時に責任を負う者が負担するものとした。
(五)技術調査官に関する規定
「裁決弁法」では、国家知識産権局が技術調査官を派遣して案件処理に参加し、技術調査意見を提出することができることが明確にされた。また、関連技術調査意見の案件における法的地位をさらに明確化し、関連意見は合議体が技術事実を認定する際の参考とすることができるものとした。
(六)期限に関する規定
第一に、立件の期限を明確にした。「専利行政執行方法」を参照し、請求が「専利行政執行方法」の第 4 条の規定を満たす場合、請求書を受領した日から 5 営業日以内に立件し、請求人に通知することが明確化された。
第二に、口頭審理通知の期限を明確にした。「裁決弁法」第 16 条では、口頭審理の時間、場所を当事者に少なくとも 5 営業日前までに通知しなければならないことが明確にされた。
第三に、事件処理の期限を明確にし、立件日から 3 ヶ月以内に結審すべきものとした。事件が複雑であったり、その他の原因により、所定の期限内に事件を結審することができない場合、承認を経て、1 ヶ月間延長することができることとした。事件が特に複雑であったり、その他の特殊な状況があり、延期しても結審することができず、承認を経て引き続き延期する場合は、同時に延長の合理的な期限を確定すべきであるものとした。
(七)執行と公開
「裁決弁法」第 23 条では、行政裁決により専利権侵害行為が成立すると認定された場合には、直ちに権利侵害行為を停止するよう命じ、かつ必要に応じて関連する主管部門、地方人民政府の関係部門と協力して速やかに権利侵害行為を制止させなければならないものとした。また、当事者が不服である場合、法に基づき裁判所に提訴することができるものとした。法律に規定された状況を除き、訴訟期間中は行政裁決の執行を中止しないものとした。
行政裁決が下された後には、「政府情報公開条例」及び関連規定に基づき社会に公開しなければならず、商業秘密など公開するのに適さない情報についてはそれを削除してから公開しなければならないものとした。
(八)その他の手続
「裁決弁法」ではさらに、裁決の担当者、立件手続、忌避制度、事件の併合処理、口頭審理手続、中止の条件、無効手続との関係、調停手続、執行及び公開、司法救済ルート等についても明確に規定されている。
<特集>
●商標審査審理指南が 2022 年 1 月 1 日より施行
商標の審査審理手続きの規範化と、商標審査審理の各段階における法律適用と審査基準の統一のために、国家知的財産局は 2021 年 11 月に「商標審査審理指南」(以下、「指南」とする)を公表し、該指南は 2022 年 1 月 1 日から正式に施行された。同時に、従来用いられていた「商標審査及び審理標準」(以下、「標準」とする)は廃止された。
本稿では、新たに施行された「指南」の概要を紹介すると同時に、従来の「標準」との相違点についても解説する。なお、中国の商標関連規定において、「商標審査」は商標登録出願に対する審査を意味し、「商標審理」は異議申立、不使用取消、無効審判における審理を意味する。
1.「指南」の構成
(1)上編の構成
「指南」は上下 2 編に分かれており、上編の「形式審査及び事務作業編」は、従来の各段階の形式審査における基準や規則を系統立ててまとめたものである。上編は、大きく 5 つの部分に分かれている。
第 1 部分は、「商標出願の形式審査」に関する5 章から成り、商標の各種手続きにおける出願・申請書類の審査、即ち形式審査を扱う。
第 2 部分は、「商品・役務及び商標検索要素の分類」に関する 4 章から成り、商標検索のための分類を示す。
第 3 部分は、「その他の商標手続きの審査」に関する 3 章から成り、商標の変更、譲渡、更新等の手続きを扱う。
第 4 部分は、「マドリッドプロトコルに基づく商標の国際登録出願の審査」に関する6章から成る。
第 5 部分は、「商標出願手続きの処理」に関する 7 章から成り、主に、商標登録出願及びその後の手続きにおける関連文書の受領と応答、送達等の処理について規定している。
(2)下編の構成
下編の「商標審査審理編」は、商標の実体審査基準を示す。従来の「標準」の内容に基づいて修正・補完されたもので、継続された基準と、新たに設けられた基準とが含まれる。冒頭に「概説」の章が設けられた上で、内容は主に商標の絶対的登録要件と相対的登録要件の審査に分けられている。具体的な内容は以下の通りである。
① 概説
第 1 章に「概説」を設け、全編に先だって、商標審査審理の基本原則、範囲及び基本概念等を明確にした。
基本原則としては、現行商標法の規定、並びに商標の権利付与・権利確定の実務における普遍的な考え方に基づいて、商標審査審理における 5 つの基本原則を明確にした。即ち、信義誠実の原則(公序良俗違反等を含む、比較的広い概念)、登録主義使用補助の原則(主に同日出願の扱い、未登録商標の保護、商標登録後の使用行為に対する規範等に体現される)、合法的先行権利保護の原則、統一基準・個別案件審理の原則(同様の状況は同様に処理し、異なる状況には異なる処理を行う)、並びに、権利濫用防止の原則である。
商標審査審理の範囲については、「指南」において絶対的登録要件と相対的登録要件の概念を固定し、審査と審理のプロセスを分離し、商標法及び実施条例の規定に厳格に従って、概念及び条文適用等の方面から各プロセスにおける審査と審理の境界を明確にしている。
基本概念について、第 1 章では、「商標」、「商標の識別顕著性」、「商標の同一又は類似」、「商品・役務の同一又は類似」、「混同」、「商標的使用」、「不正な手段及び悪意」という商標法の枠組みにおいて最も基本的な 7 つの概念の意味及び範囲を説明している。
② 商標の絶対的登録要件
第 2 の部分では、国家知識産権局の審査官が職権で審査する商標の絶対的登録要件の審査について、以下のようにまとめている。
第 2 章:使用を目的としない悪意の商標登録出願の審査審理(新設)
第 3 章:商標法第 10 条に関する審査審理
第 4 章:通常商標の識別顕著性の審査審理
第 5 章:商標の同一又は類似の審査審理
第 6 章:立体商標の審査審理
第 7 章:色の組合せ商標の審査審理
第 8 章:音声商標の審査審理
第 9 章:団体商標・証明商標の審査審理
③ 商標の相対的登録要件
第 3 の部分では、利害関係人の請求に応じて審査される商標の相対的登録要件の審査について、以下のようにまとめている。
第 10 章:馳名商標の審査審理
第 11 章:代理人・代表者による抜駆け商標登録の審査審理
第 12 章:特定関係者による抜駆け商標登録の審査審理
第 13 章:商標代理機関による商標登録出願の審査審理
第 14 章:「他人の先行権利を損害する」に関する審査審理
第 15 章:他人の使用により一定の影響力を有する商標の抜駆け登録の審査審理
第 16 章:商標法第 44 条第 1 項の「詐欺又は不正手段により得られた商標登録」に関する審査審理
第 17 章:商標登録の取消に関する審査審理
④ その他
第 4 の部分として、第 18 章に商標法第 50 条の適用基準について、第 19 章に審査意見通知書の適用についてまとめている。
2.「指南」の特徴
今般施行された「指南」には、従来の「標準」と比べて、以下のような特徴がある。
(1)位置づけの変化
「指南」は、1983 年の商標法施行以降、初めて商標業務の全プロセスをカバーした審査審理基準であり、国家知識産権局の規範性文書として公布され、マイルストーンとしての意義を有する。従来の「標準」に比べ、「指南」では、その位置づけが更に明確である。
(2)構成の変化
従来の「標準」は、全体が「商標審査標準」と「商標審理標準」とに分かれており、実体審査のみを対象としていた。これに対し、「指南」では、審査と審理を分けることなく、商標法の条文の順序に従って各章を配置し、「標準」の内容の大部分を下編の「商標審査審理編」に整理し、更に上編の「形式審査及び事務作業編」を追加している。追加された「形式審査及び事務作業編」の内容は、これまで他の様々な規定で分散して定められており、「標準」には含まれていなかったが、「指南」の枠組みの下で、形式審査の基準についても明確な根拠が得られた。整理後の「商標審査審理編」は、商標の絶対的登録要件と相対的登録要件の審査を分けて記載しているが、従来の「標準」では、これを分けずに単純に列記していた。
(3)内容の変化
①「指南」では、商標局をめぐる組織改革を受けて、組織の名称が修正されている。
②「指南」には、商標法及び関連法の改正が反映されている。
具体的に、商標法改正に対応するために、2019 年版の商標法第 4 条に追加された、使用を目的としない悪意の商標出願の審査について詳細に説明しており、定義を行うだけでなく、商標登録出願人、標識、商標登録出願人の行為等の方面から、第4条の適用にあたり考慮すべき要素について規定し、具体的な状況を挙げている。更に、適用が排除される状況についても明確にしており、いわゆる防衛出願は、「使用を目的としない悪意の商標出願」を構成しないと規定している。また、審査、異議申立、無効審判のそれぞれの段階における考慮すべき要素の違いについても規定している。
その他の法改正への対応では、まず、2018 年5 月から施行された「英雄烈士保護法」の適用について、商標法第 10 条第 1 項第 8 号の「社会主義の道徳風習を害するもの、又はその他の不良な影響をもたらすもの」について、説明している。
また、「不正競争防止法」の 2017 年改正への対応として、「指南」では、不正競争防止行為の類型のうち、「著名商品特有の名称、包装、装飾と同一又は類似の標識を無断で使用する行為」を、「一定の影響力を有する商品の名称、包装、装飾と同一又は類似の標識を無断で使用する行為」と修正している。
③ 「指南」には、商標審査審理の実務の変更が反映されている。
まず、第 1 章「概説」を追加したことにより、商標審査審理の基本原則、範囲、商標の権利付与・権利確定の過程における基本概念について説明した。
また、代表的な指導的判例を多数組み込むことにより、関連条文の適用について、より良い説明を行い、ガイドラインとしての確定性が強められている。
更に、「指南」では、商標法第 10 条第 1 項第 7号の「欺瞞性を有する標識」の解釈が修正されており、「標準」における「欺瞞性を有するとは、商標が指定商品・役務の品質等の特徴又は産地について、その固有の程度を超えた又は事実と異なる表示を行い、公衆に商品・役務の品質等又は産地について誤認を生じさせることをいう」との規定が、「欺瞞性を有するとは、標識が指定商品・役務の品質等の特徴又は出所について、誤認を生じさせることをいう」と修正された。これにより、「産地」が「出所」へと解釈が拡大され、当該条文の適用範囲が非常に広くなった。
商標法第 10 条第 2 項の「県級以上の行政区画の地名又は公衆に知られている外国地名は、商標とすることはできない」の審査基準にも、比較的大きな解釈の修正があった。地域商標の発展及び保護に適応するため、「指南」では、地名が登録を受けられる状況が多数追加された。これは主に、「市レベル以上の行政区域の地名+工業事業の名称である標識の審理審査基準」の項目に示されている。
商標法第30条に規定の「他人の同一商品若しくは類似商品について既に登録若しくは初歩査定された商標と同一若しくは類似するときは、商標局は出願を拒絶し公告しない」について、「混同」の判断基準が確立された。また、商標の各段階の手続きにおける、「混同」の認定のために考慮すべき要についても詳細な説明がなされた。
商標の標識そのものの類似度は、混同の可能性に影響を与える最も根本的な要素であり、基礎的な事実である。商標登録の審査過程において、同一又は類似の判断をする際は、主に、商標そのものの類似度を考慮する。その他の手続きにおいて、商標の同一又は類似を判断する場合には、類似するという基礎に基づいて、更に、先行商標の識別顕著性、先行商標の知名度、関連公衆の注意レベル、商標出願人の主観的意図等を考慮して、同一又は類似の商品・役務における商標の使用が、関連公衆をして商品・役務の出所について容易に混同を生じせしめるかを、総合的に判断すべきである。
商標法第13条の著名商標の保護規定に関する解釈の変化は、「必要に応じて認定」の定義の変化、「信義誠実の原則」の追加、「誤導」の定義の明確化などに示されている。
「必要に応じて認定」について、「標準」では、「係争商標と他人の商標との相違が比較的大きい、又は、係争商標が指定使用した商品・役務と他人の商標が指定使用した商品・役務との相違が比較的大きい場合、係争商標の登録は混同を生じさせたり、公衆を誤導して著名商標の権利者の利益に損害を与えたりし得ないため、商標局、商標評審委員会は、他人の商標が著名商標であるか否かを認定する必要はない」と規定されていた。「指南」では、これを、「案件の証拠により商標法の他の条文を適用して当事者の商標を保護できる場合、又は、係争商標の登録が混同を生じさせたり、公衆を誤導して当事者の利益に損害を与えたりし得ない場合、商標登録部門は当事者の商標に対し著名商標か否かを認定する必要がない」と修正した。
「信義誠実の原則」は、手続き的には、当事者が陳述する事実及び提出する証拠の真実性、正確性及び完全性について責任を負い、これらに反した場合の不利な結果を法に則って自らが負うことについて、書面で承諾することを要求している。実体的には、著名商標の認定の当事者に、その他の領域において信用を失う行為や法律法規に違反する行為があった場合、著名商標の認定を請求する権利を失うことを定めている。
「誤導」について、「標準」では、「混同」と「誤導」を分けて説明しており、「誤導」は希釈化を意味する。これに対し、「指南」では、「混同」と「誤導」を一緒に説明しており、「誤導」は混同と希釈化の両方の状況を含むとされている。
④ 「指南」はインターネット時代の変化に対応している。
商標の使用証拠の形式が豊富になり、商標をオンライン販売で使用した取引書類又は取引記録、商標のインターネットメディア上の広告宣伝での使用等の、商標使用の形式が増加した。また、商標法第 13 条、第 15 条、第 32 条後半の適用において、中国領域外での使用により中国領域内で効果を生じる傾向が示された。
⑤ 「指南」は社会的に注目されている問題を取り入れている。
商標と認められない標識(商標法第10条の使用禁止規定)の審査において、国家戦略及び政策の名称、伝染病等の突発的な公共の事件の名称等に使用禁止規定を適用する旨の説明が新たに追加された。
ここで特に指摘したいのは、新型コロナウィルスが全世界に猛威を振るう状況において、「標識及びその他の構成部分が重大な感染症等の公共衛生事件に関する特有の語と同一又は類似であり、公衆に当該突発事件を連想させ易く、社会公共の秩序を乱す標識は、商標として使用することができない」と明確に記載し、「指南」制定過程における社会的関心の高い問題への関心と反応を示した点である。
商標の識別顕著性(商標法第11条の登録禁止指定)の審査において、インターネット上の流行語及び絵文字、祝祭日の名称、格言警句等は商標としての識別顕著性を有しないとの規定が追加された。
⑥ 「指南」では、マドリッドプロトコルに基づく商標の国際登録出願の審査、商標審査手続きに関する詳細な規則等に関する幾つかの重要な章が追加された。
「指南」は、「標準」に比べて、位置づけ及び構成において比較的大きな変化があっただけではなく、多くの内容が追加されている。しかしながら、「指南」に述べられた考え方は、「指南」公布前の実務において既に広く使用されていたものである。よって、「標準」に替わる「指南」の制定は、「指南」による「標準」の補完、及び商標審査審理の実務経験の総括と考えるのが妥当である。「指南」の公布と施行は、多くの商標実務者及び出願人に対し、より明確で具体的なガイドラインを示す、非常に重要な意義を有する。