Newsletter Vol. 19(2021年5月)

最高人民法院知財法廷2020年10大判例/改正著作権法/懲罰的賠償の司法解釈・判例/改正専利法暫定弁法【中国】【特許】【裁判】

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Shangcheng Newsletter Vol.19(2021.05)

添付資料:改正専利法の施行に関する関連審査業務処理の暫定弁法の和訳

 

<中国知財ニュース>
最高人民法院知財法廷が 2020 10 大判例及び受理件数等を公表
知的財産局が 2020 年の統計データを発表
改正「中華人民共和国著作権法」が 2021 6 1 日より施行される

<特集>
最高人民法院が懲罰的賠償に関する司法解釈と判例を公表
知的財産局が改正専利法施行に関する暫定弁法を公布

 

<中国知財ニュース>
最高人民法院知財法廷が 2020 10 大判例及び受理件数等を公表

 2021 2 26 日、最高人民法院は、最高人民法院知的財産権法廷(以下、「知財法廷」と称する)の設立 2 周年の作業状況を報告し、2020 年の技術系知的財産権の典型判例として 10 件の判例を発表した。 

 

 報告によると、知財法廷の設立後、裁判基準が統一され、知財法廷が技術系知的財産権上訴事件を一括して審理することになったことで、従来 32か所あった地方高級法院の第二審で発生していた裁判基準の不統一の問題が体制の面により解決された。また、裁判の質と効率が大幅に向上し、この 2 年間で受理した事件は 5121 件、結審件数は4220 件で、結審率は 82%となった。その内、2020年に結審した件数は 2787 件であり、2019 年に比べ 1354 件増加し、95%近く増加した。

 

 また、発表された 10 件の重要判例のうち、5 件が特許に関する事件、2 件が技術秘密に関する事件であり、コンピュータソフトウェア、集積回路配置設計及び独占禁止事件に関する事件がそれぞれ1 件となっている。その内、「カプール」技術秘密懲罰的損害賠償事件は、最高人民法院が下した最初の懲罰的損害賠償事件である。この事件については、後半の懲罰的賠償に関する記事の中で詳細を紹介する。


知的財産局が 2020 年の統計データを発表

 2021 1 22 日、国家知識産権局は、2020年の中国の特許・実用新案・意匠、商標、地理的表示、集積回路に関する統計データを発表した。


1.専利(特許・実用新案登録・意匠登録)について
 2020 年、中国の発明特許の登録件数は 53.0万件であった。2020 年末までの中国国内(香港・マカオ・台湾を除く)の有効な発明特許の件数は221.3 万件であった。
 2020 年に受理した PCT 国際特許出願件数は7.2 万件で、その内、国内出願人によるものは 6.7万件であった。国内実用新案の登録件数は合計237.7 万件、意匠の登録件数は 73.2 万件であった。特許不服審判の結審件数は 4.8 万件で、前年に比べ 28.9%増加した。無効審判の結審件数は0.7 万件で、前年に比べ 34.1%増加した。

2. 商標について
 2020 年、国内商標登録件数は 576.1 万件であった。中国出願人によるマドリッドプロトコルに基づく国際商標出願件数は 7553 件であった。商標異議申立の結審件数は 14.9 万件で、前年に比べ64.7%増加した。商標の各種審判事件の結審件数は 35.8 万件で、前年に比べ 7.8%増加した。

3. 地理的表示について
 2020 年、地理的表示製品の保護申請の受理件数は 10 件で、地理的表示製品として 6 つの製品の保護が認められ、地理的表示製品専用マークを利用できる企業として 1052 社が認められた。また、765 件の地理的表示商標が登録された。2020 年末までに、累計 2391 個の地理的表示製品が認められ、累計 9479 社の専用マーク使用企業が認められ、6085 件の地理的表示商標が登録された。

4.集積回路配置設計について
 2020 年の集積回路配置設計登録出願件数は14375 件で、前年に比べ 72.8%増加した。また、11727 件の集積回路配置設計登録について証明書が発行され、前年に比べ 77.3%増加した。

5.知的財産権の保護と運用について
 2020 年、全国の知的財産権に関する機関が処理した専利(特許・実用新案登録・意匠登録)権侵害紛争に関する行政処分件数の合計は 4.2 万件を超えた。専利(特許、実用新案登録、意匠登録)及び商標について質権設定した項目は 12039 件で、前年に比べ 43.8%増加した。質権を設定した融資総額は 2180 億人民元に達し、前年に比べ43.9%増加した。


改正「中華人民共和国著作権法」が 2021 6 1 日より施行される

 2020 11 11 日、全国人民代表大会常務委員会にて、「中華人民共和国著作権法」の改正に関する決定が可決された。改正著作権法は 6 67 条からなり、2021 6 1 日より施行される。


 主な改正点としては、故意侵害に対する15倍の懲罰的賠償の導入、法定賠償上限額の引き上げ、著作権侵害行為に対する行政処分権限の強化など、著作権保護の強化に関連するものが目立つ。また、視聴覚作品に関する定義が変更されてインターネット上の短い動画などの新しい類型の作品が保護対象となったことや、著作権/著作者隣接権を保護するために権利者が作品に対して一定の技術的措置(コピープロテクト等)をとれるようになったこと等が注目を集めている。

 

 今回の改正は、「特許法」の改正に続く大きな知的財産権法の改正である。改正後の著作権法は、サイバースペースにおける著作権保護の整備、特に権利侵害の法定賠償額の上限の大幅な引き上げや、懲罰的損害賠償の原則を明確にするなどの関連規定を通じて、司法救済措置を整備し、権利侵害行為を効果的に抑制することで、創作者が自身の合法的権益を守るための法的保護を整備したことに意義があるものといえる。

 

<特集>
最高人民法院が懲罰的賠償に関する司法解釈と判例を公表

 今年の 6 月 1 日から施行される第四次改正専利法では、「故意に専利権を侵害し、情況が深刻である場合、専利法に規定の方法で確定した金額の1倍以上5倍以下の賠償金額を確定することができる」という懲罰的賠償制度が導入された。同様の規定は、既に、商標法、不正競争防止法、著作権法及び民法典にも導入されている。


 この懲罰的賠償制度に関し、最高人民法院は、2021 年 3 月 2 日に「知的財産権侵害民事事件審理における懲罰的賠償の適用に関する解釈」を公表し、3 月 3 日から施行した。同司法解釈は全7条から成り、懲罰的賠償の適用基準や金額算定方法等について規定している。また、最高人民法院は、参考として、懲罰的賠償が適用された典型判例 6 件を公表した。


 以下、司法解釈の内容と、典型判例のうち代表的な2件の概要を紹介する。

1.司法解釈の内容
(1)請求主義
 司法解釈第 1 条第 1 項では、原告が、被告が自らの知的財産権を故意に侵害しており、且つ状況が深刻であると主張して懲罰的賠償を求める場合、人民法院はこれを審理しなければならない、と規定している。知的財産権侵害に対する懲罰的賠償については、民法典第 1185 条に、「故意に他人の知的財産権を侵害し、状況が深刻である場合、被侵害者は相応の懲罰的賠償を請求する権利を有する。」との一般規定があり、被侵害者の請求主義の原則が示されている。司法解釈第 1 条第 1 項の規定は、この原則に則ったものである。


 また、司法解釈第 2 条では、原告による懲罰的賠償請求のタイミングについて、原則的に起訴時に、賠償金額、計算方法及び根拠となる事実と理由を明確にして請求すべきことを定めている。懲罰的賠償の請求を後から追加する場合、一審の法廷弁論終結前までは認められるが、二審で追加された場合には、当事者間の和解を勧告し、和解が不調に終わった場合には、別途の訴訟提起が求められる。


(2)主観的要件
 懲罰的賠償の主観的要件について、商標法及び不正競争防止法では、「悪意の侵害」と規定されており、民法典、専利法等では、「故意の侵害」と規定されている。そのため、この「悪意」と「故意」の解釈について、これまで様々な意見が出されていた。司法解釈第 1 条第 2 項では、「本司法解釈における『故意』は、商標法第 63 条第 1 項及び不正競争防止法第 17 条第 3 項に規定の『悪意』を含む」と規定している。これにより、「悪意」と「故意」に実質的な相違がないことが明確にされた。


 また、司法解釈第 3 条では、侵害の「故意」の認定について、侵害された知的財産権の種類、権利状態及び関連製品の知名度、被告と原告又は利害関係人との関係等の要素を総合的に考慮して判断することが規定された。更に、被告が原告又は利害関係人による通知・警告後も侵害行為を継続した場合や、被告と原告又は利害関係人との間に業務提携や販売代理などのビジネス上の関係や交渉の経緯がある場合、被告がコピー品販売や商標の模倣を行った場合等を列挙し、そのような場合には故意侵害が認定されることが規定された。


(3)客観的要件
 懲罰的賠償適用の客観的条件は、侵害行為の状況が深刻であることである。これについて、司法解釈第 4 条では、侵害の手段、回数、侵害行為の持続時間、地理的範囲、規模、結果、侵害者の訴訟中の行為等の要素を総合的に考慮して判断すると規定している。更に、同じ侵害行為について行政処分や裁判所の判決を受けた後で再度侵害した場合、専ら侵害行為を業としている場合、侵害の証拠を偽造・滅却・隠ぺいした場合、保全の裁定の履行を拒否した場合、侵害行為による利益又は権利者の損害が膨大である場合、侵害行為が国家の安全、公共の利益または人身の健康を危険にさらす可能性がある場合等を列挙し、そのような場合には状況が深刻と認定されると規定している。


(4)懲罰的賠償金額の決定
 懲罰的賠償金額は、法定の方法で確定された損害賠償額である基準額に、1~5倍の倍率を乗じた金額で確定される。


 解釈第 5 条第では、まず、基準額について、原告の実際の損害額、或いは、被告の不法所得額又は侵害行為により得られた利益額により確定されると規定している。これらがいずれも確定できない場合には、ライセンス料の倍数により合理的に基準額を確定することができる。また、この基準額には、原告が侵害行為の制止のために支払った合理的な支出は含めないが、関連法に別途の規定がある場合には、それに従うとしている。


 次に、倍率については、第 6 条において、被告の主観的過失の程度や侵害状況の深刻性などの要素を総合的に考慮して決定するとされている。


2.懲罰的賠償の典型判例
 最高人民法院は、2021 年 3 月 15 日に、懲罰的賠償が適用された 6 件の典型判例を公表した。いずれの判例でも、懲罰的賠償適用の主観的・客観的要件について詳細に論じられており、判断基準や金額算定根拠を理解する上で参考になる。以下、その中でも代表的な 2 件について紹介する。


(1)広州天賜 VS 安徽紐曼営業秘密侵害事件(2019 最高法知民終 562 号)
 原告は、化粧品等の原料として使用されるカプール(カルボマー)製品の製造工程に関する技術上の秘密を持ち出した元社員と、当該技術情報に基づいて製品を製造・販売した企業等の行為が不正競争防止法に規定された営業秘密の不正取得及び使用にあたるとして、広州知財法院に対し、侵害行為の停止と損害賠償、公開謝罪を求める侵害訴訟を提起した。

 

 一審裁判所は不正競争行為を認め、侵害製品の売上に利益率を乗じて求めた金額を、侵害者の利益額として確定した。その上で、侵害者が関連の刑事訴訟において有罪判決を受けた後も侵害行為を継続したこと、侵害品が国内外の二十余りの地域で販売されており、侵害による利益が巨額におよぶこと、窃取された技術上の秘密が製品製造のポイントとなるものであることを理由に、侵害者の利益額を 2.5 倍した 3000 万元の懲罰的賠償を課した。


 原告は、侵害品製造の専用設備の廃棄や 5 倍の懲罰的賠償を求めて最高人民法院に上訴した。二審では、一審裁判所が求めた侵害者の利益額に対し、商業秘密の貢献度を考慮して 50%を乗じた金額を、懲罰的賠償の基準額として確定した。
一方、懲罰的賠償の倍率については、侵害企業が本件侵害品の製造のみを経営内容としている点、損害額確定のための裁判所による文書提出命令に応じなかった点、一審判決後も侵害行為を継続した点等も考慮し、一審の 2.5 倍から、規定上の上限である 5 倍へと引き上げた。結果として、二審判決における損害賠償額は、一審判決と同額の3000 万となったが、最高人民法院が、侵害者の主観的悪意、挙証妨害行為、及び侵害行為の持続期間や規模を充分に考慮した上で、判決において初めて懲罰的賠償を課し、且つ法定の上限である5 倍という倍率を採用した点が注目に値する。本件が典型判例の 1 件目として公表されたことからは、懲罰的賠償制度を積極的に活用して知的財産権保護を図っていくという人民法院の強いメッセージが感じられる。


(2)小米科技 VS 中山奔腾商標権侵害・不正競争事件(2019 蘇民終 1316 号)
 携帯電話メーカとして著名な小米社が、「小米生活」等の商標を登録して炊飯器などの小型家電を販売している被告の行為が商標権侵害及び不正競争行為にあたるとして訴訟提起した事件。一審の南京市中級人民法院は、販売規模・販売範囲・数量・製品の種類・販売額の大きさ、及び「小米」商標の知名度の高さを理由に、2 倍の懲罰的賠償を適用した。被告は、これに不服として江蘇省高級人民法院に上訴した。

 

 二審裁判所は、主観的故意の認定理由として、被告が一審判決後も侵害製品の宣伝・販売を継続したことを更に指摘した。また、侵害規模の大きさや「小米」商標の知名度に加え、侵害製品の品質上の問題が小米製品に対する消費者の信頼を傷つけたこと等も理由として、懲罰的賠償の倍率を 3倍に引き上げた。判決における損害賠償額は、結果として、一審・二審ともに原告請求額である 5000万元となったが、当時の商標法における上限である 3 倍の倍率を適用し、高額の懲罰的賠償を課した意義は大きい。


3.所感
 司法解釈の内容、及びその後に公表された典型判例には、知的財産権の保護を強化し、侵害行為に厳しい態度で臨む人民法院の姿勢が強く示されている。知的財産侵害訴訟において懲罰的賠償が採用された件数は未だごく少数であるが、損害賠償額の高額化の傾向と併せて、今後の動向に注目する必要がある。


知的財産局が改正専利法施行に関する暫定弁法を公布

 中国知的財産局は、2021 年 5 月 25 日に、改正専利法の施行に関する暫定弁法を公布した。該弁法は、改正専利法と同じ 2021 年 6 月 1 日より施行される。


 弁法では、改正専利法で盛り込まれた多くの新規定について、6 月 1 日以降は新規定に対応した出願や申請を受け付けるが、実際の審査は、現在改正作業が進行中の専利法実施細則が施行された後に行う、と規定されている。実施細則については、2020 年 11 月 27 日に改正案が公表され、2021 年 1 月 11 日までパブリックコメント募集が行われていたが、改正専利法が施行される 6 月 1 日以前に正式公布することが難しくなったため、このような暫定弁法が公布されたものと思われる。


 弁法の主な内容は以下の通りである(詳細は添付の全文訳参照)。


1.部分意匠出願:6 月 1 日以降は出願可能だが、審査は改正実施細則施行後に行う、とのみ規定されている。6 月 1 日より前の優先権を主張して 6 月1 日以降に中国に出願された部分意匠出願について、優先権主張が認められるか否かは明確にされていないが、条文の規定ぶりを見る限り、認められる可能性が高いと考える。


2.意匠の国内優先権:6 月 1 日以降の出願において意匠の国内優先権を主張可能だが、優先権主張の審査(優先権の基礎となる意匠出願の審査を含む)は、改正実施細則施行後に行うと規定されている。


3.意匠権の存続期間:2021 年 5 月 31 日以前に出願された意匠出願の存続期間は、旧法に従い出願から 10 年とする、と規定されている。よって、15 年の存続期間を得たい場合には、6 月 1 日以降に意匠出願する必要がある。


4.特許・実用新案の優先権証明書:6 月 1 日以降は、優先日から 16 カ月以内という改正専利法の規定に従って優先権証明書を提出することができる。


5.専利期間調整:審査遅延による専利期間調整については、6 月 1 日以降に登録公告された出願が対象となる旨が規定されている。権利者は、登録公告から 3 ヵ月以内に申請を行い、その後、所定の費用を納める必要があるが、申請に対する審査は、改正実施細則施行後に行われる。


6.薬品特許の存続期間延長:新薬の発売許可申請に関する権利期間の延長は、2021 年 6 月 1 日以降、発売許可の日から 3 ヵ月以内に申請することができると規定されている。権利者はその後、所定の費用を納める必要があるが、申請に対する審査は、改正実施細則施行後に行われる。


7.その他:国家の緊急事態・非常事態に関する新規性喪失の例外の申立て(改正法第 24 条第 1 項)、専利権の開放許諾の声明(同法第 50 条第 1 項)、被疑侵害者による専利権評価報告書の請求(同法第 66 条)についても、6 月 1 日以降に可能となる。また、信義則に反する出願(同法第 20 条)、及び原子核変換方法の不登録事由(同法第 25 条第 1項第 5 号)については、6 月 1 日以降の方式審査・実体審査・復審に適用される。

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