2025年12月27日、中国全国人民代表大会の公式ウェブサイトに『中華人民共和国商標法(改正草案)』(以下「草案」という)が公表され、パブリックコメント募集が開始されて、各界の広範な関心を集めた。今回の改正は、1983年3月1日に施行された中華人民共和国商標法の第5次改正にあたり、同時に、初めての全面的な改正でもある。主な改正内容は、商標法の全体構造の調整、概念・定義の明確化、規制範囲の拡大、手続きの最適化、法的責任の強化などに現れており、社会の関心が高い悪意の商標出願・商標ストック行為、馳名商標の保護範囲、異議申立や不服審判などの手続きにおける空転現象、および「公衆の誤認をまねく」使用の乱れなどの問題について対応を行っている。
草案では、現行の商標法の8章73条に「商標登録の要件」という章が新たに追加され、9章84条へと拡充された。再構築された全体の構成は、より科学的で厳密なものとなった。草案内容のうち、商標の権利付与・権利確定に係わる実務に特に影響が大きいと思われるいくつかの内容について、以下に説明する。
1.登録可能な商標のタイプの拡大:「動的商標」の保護の新設
草案は初めて「動的商標」を登録可能な商標のタイプに含め、第14条において「自然人、法人又は非法人組織の商品を他人の商品と区別することができる文字、図形、アルファベット、数字、立体的形状、色彩の組合せ、音声、動的商標等、並びにこれらの要素の組合わせを含む標章は、すべて商標登録出願をすることができる。」と明記した(改正・追加部分に下線付与、以下同様)。
これは単なる要素の追加だけではなく、時代の発展に対応した制度的革新でもあり、企業がデジタル環境で創出する動的商標(例えば、携帯電話やパソコンの起動・終了画面、アプリケーション起動時のローディングアニメーション、スポーツ選手の特徴的な祝福動作、など)に対して明確な法的保護根拠を提供するものである。
2.悪意の出願・商標ストック行為の規制:審査と罰則の明確化
商標登録の規範に関して、草案第18条は現行法第4条(悪意の出願の拒絶)と第44条(不正な手段による登録の無効)の関連内容を統合し、「使用を目的とせず、明らかに通常の生産経営の必要性を超えて商標登録出願をしたものについては、登録をしない。欺瞞又は他の不正な手段により商標登録出願をしてはならない。」と記載した。
一方で、同条は、現行法で規定されている「使用を目的としない悪意の商標登録出願は拒絶しなければならない」を、「使用を目的とせず、明らかに通常の生産経営の必要性を超えて商標登録出願をしたものについては、登録をしない」と修正した。これにより、「悪意」を審査する際にポイントとなる基準が「使用目的」と「通常の生産経営の必要性」にあることが明確化され、審査基準がより客観性を帯びることとなった。
他方で、同条は「欺瞞又は他の不正な手段」により商標登録した行為について、「商標局は当該登録商標の無効宣告を行う」との規定を、「商標登録出願をしてはならない」との規定へと修正した。この調整は、商標登録秩序の維持が「事後的救済」から「事前予防」へと転換され、誠実信用の原則が強化されたことを示している。
同時に、草案は悪意の商標登録出願行為の具体的な状況と罰則措置を明確にした。第53条では、商標登録出願者が悪意による商標登録出願行為を行い、悪影響を及ぼした場合、商標法執行部門は警告を与え、10万元以下の罰金を科すことができるとしている。
まず、同条に列挙されている「悪意の出願」の具体的な状況としては、以下のものが含まれる。
1)草案第15条(使用禁止標章)の規定に違反することを知りながら、なお商標として登録出願したもの(即ち、中国共産党の名称・党旗・党徽・勲章、中華人民共和国の国名・国旗などと同一又は類似のもの、外国の国名・国旗などと同一又は類似のもの、各国政府よりなる国際組織の名称・旗などと同一又は類似のもの、実施管理し、保証することを表す政府の標章・検査印と同一又は類似のもの、赤十字・赤新月の名称・標章と同一又は類似のもの、民族差別的な扱いの性質を帯びたもの、欺瞞性を帯び公衆に商品の品質等の特徴又は産地について誤認を生じさせやすいもの、社会主義の道徳・風習を害し又はその他の悪影響を及ぼすものなどの標章。なお、第15条の「使用禁止標章」には、草案において中国共産党関連の標章が追加された)。
2)草案第18条の規定に違反して商標登録を出願したもの(即ち、「使用を目的とせず、明らかに通常の生産経営の必要性を超えて商標登録出願をしたもの」、および「欺瞞又は他の不正な手段により商標登録出願をしたもの」)。
3)草案第20条(馳名商標の保護に関する規定)、第21条(他人の未登録商標の抜け駆け登録に関する規定)、第23条(「商標登録出願は、先行権利を侵害してはならず、抜け駆け登録してはならない」との規定)の規定に故意に違反して商標登録を出願したもの。
次に、同条が「悪意のある出願」に対して新設した「警告+10万元以下の罰金」という措置は、法的な結果を商標登録制度の内部における「登録を認めない」(拒絶/無効)から、市場監督管理部門が直接科す「行政処分」へと拡大するものである。これは、「悪意のある出願」行為が、もはや単に個別の出願が認められないという手続き上の問題にとどまらず、独立した行政違法行為を構成することを意味する。
3.馳名商標保護の強化:未登録の馳名商標の保護範囲の拡大
草案第20条第2項は、現行法で規定されている「非同一又は非類似の商品について登録出願した商標が、中国で登録されている他人の馳名商標を複製、模倣又は翻訳したものであって、公衆を誤認させ、当該馳名商標登録者の利益が損なわれる可能性があるときは、その登録をせず、かつその使用を禁止する。」との規定を、「非同一又は非類似の商品について登録出願した商標が、他人の馳名商標を複製、模倣又は翻訳したものであって、公衆を誤認させ、当該馳名商標の所有者の利益が損なわれる可能性があるときは、その登録をせず、かつその使用を禁止する。」と修正した。
この修正により、「中国で登録されている」という条件が撤廃され、商品・役務区分を超えた保護を受ける馳名商標の範囲が、「登録済み」の馳名商標から「未登録」馳名商標にまで拡大された。これは「登録主義」から「名声主義」への転換を示す。商標権利者にとっては、権利の保護を要求する時点で「商標が中国で馳名な状態に達していること」の証明に集中すればよくなり、権利保護のハードルが低くなった。
4.商標の権利付与・権利確定の手続きの最適化:異議申立期間の短縮、審査審理中止事由の明確化、審査基準の規範化、関連する隔離期間の削除
草案による商標の権利付与・権利確定手続きの最適化は、主に以下の点に現れている。
第一に、草案第35条は、「初歩査定及び公告された商標について、公告の日から2ヶ月以内に、この法律の第19条、第20条、第21条、第22条第1項、第23条の規定に違反していると先行権利者、利害関係者が判断したとき、又はこの法律の第15条、第16条、第17条、第19条、第24条の規定に違反していると何人かが判断したときは、国務院の商標管理部門に異議を申し立てることができる。公告期間を満了しても異議申立がなかったときは、登録を許可し、商標登録証を交付し公告する。」と規定している。
ここでは、現行法で規定されている商標異議申立期間を公告から3ヶ月から2ヶ月に短縮した。この調整は商標審査と登録の効率向上を目的とするが、異議申立決定及び証拠提出の時間が短縮されるため、異議申立人に対してより高い要求を課している。異議申立人は商標の監視を強化し、より短い時間内に異議申立の準備を完了させる必要がある。
第二に、草案第40条は、「国務院の商標管理部門(訳注:国家知的財産局)が商標異議申立審査、拒絶査定不服審判、登録不許可の不服審判及び無効宣告案件の審理過程において、関連する先行権益の確定について、人民法院で審理中又は行政機関で処理中の別案件の結果を根拠としなければならないときは、通常、審査審理を中止しなければならない。中止の原因が解消された後は、速やかに審査審理手続を再開しなければならない。」と規定している。