専利審査指南改正内容の詳細/商標「3年不使用取消」申請新規則のポイントと実務【中国】【特許】【商標】
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Shangcheng Newsletter Vol. 28(2025-12)
<中国知財ニュース>
●商標「3年不使用取消」申請に関する新規則のポイントと実務のアドバイス
●2025 年 11 月 10 日に公表された専利審査指南改正内容の詳細について
<中国知財ニュース>
●商標「3年不使用取消」申請に関する新規則のポイントと実務のアドバイス
商標「3 年不使用取消」申請の効率向上を図るため、正当な理由なく連続して3年間使用されていない登録商標の取消申請を適切に行えるよう、中国国家知識産権局(以下「CNIPA」)商標局は2025 年 5 月 26 日付けで改訂版《正当な理由のない登録商標の連続3年不使用による取消申請に関するガイドライン》を公表した。本ガイドラインでは、提出すべき書類や具体的な要件などの実務面の内容を明確化するとともに、不使用取消の申請時に提出するべき被申請商標の3年不使用に関する初期調査証拠の範囲を詳細に規定した。
本稿では、CNIPA がガイドライン改訂に至った経緯を概観し、新規則の下で3年不使用取消の申請条件を満たすために、どのような証拠を準備すべきかについて紹介する。
1 . 改訂の背景
「3 年不使用取消」申請件数の急増
2017 年以降、中国における「3年不使用取消」の申請件数は急速な増加傾向を示しており、わずか7 年間で、2017 年の 5.6 万件から 2024 年には22.9 万件にまで増加した。この中には、不正競争や他者の利益を害する目的で、他者が正常に使用していた登録商標に対して行われた悪意のある取消申請も少なくない。
このような悪意ある「3 年不使用取消」申請が生じた主な理由は、中国の「3年不使用取消」手続きにおいて、申請人側の挙証責任について明確な要求がなく、商標登録者側の商標使用証拠に対する具体的な要求のみが定められている点にある。悪意ある「3 年不使用取消」申請は、商標権者の商標管理コストを増大させるだけでなく、公正な市場競争環境を損ない、行政資源の浪費も招いている。
「3年不使用取消」申請における挙証責任の変化
商標の「3年不使用取消」制度のポイントは、申請人と権利者の間で商標の使用/不使用の事実に対する挙証責任を如何に分配するかにある。弊所の経験及び他の代理人から得た情報によれば、中国の「3年不使用取消」手続きにおける申請人の挙証に対する商標局の要求は、近年、およそ以下のように変化してきた。
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2022年以前 |
申請人は、被申請商標が正当な理由なく継続して3年間使用されていないおよその状況を合理的に説明すれば申請が受理され、関連証拠の提出は不要であった。このやり方は、「挙証責任の転換」ルールが適用されていたと言える。 |
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2022年の年初~2024年の年末 |
2022年の年初以降、実務上、商標局は申請人に対し、取消申請書に「被申請商標が正当な理由なく継続して3年間使用されていないこと」を示す初期的なオンライン調査の証拠(例えば、BaiduやTaobaoなどの検索サイトにおける検索結果の最初の数ページ分のスクリーンショット)の添付を求めるようになった。これは、長年続けられてきた「挙証責任の転換」ルールが、一部修正されたものと見ることができる。 |
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2025年の年初~2025年5月 |
2025年の年初以降、多くの商標代理人が、これまでにはなかった《登録商標不使用取消申請補正通知書》を受領するようになった。これは、「3年不使用取消」申請の在り方が変わり始めたことを示す兆候であった。この時期の補正通知の内容から、CNIPAの申請人が提出する初期証拠に対する要件が明らかに高度化したことが感じられる。申請人に要求される立証の程度が数値で示されるようになっただけでなく、その厳格さも増し、審査が申請人による簡易な「形式的な証拠」の提出から、「体系立った立証」が求められる段階へと移行し始めたことを示している。具体的には以下の通りである。 |
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2月に発行された補正通知書では、申請人に対し以下の初期調査証拠の追加提出が要求された。 (一)被申請商標の登録者の基本情報:事業範囲または業務範囲、経営状態または存続状態、商標登録状況などを含む。 (二)登録者が営業中または存続中の場合は、登録者の商品販売または役務提供、営業所または事務所に関する調査報告書及び証拠。 (三)被申請商標の総合オンラインプラットフォームや、当該商標の指定商品・役務業界の専門ウェブサイトなどのプラットフォームでの検索証拠。検索結果はホームページから連続5ページ分の全画面スクリーンショットを提出し、提出するプラットフォームは3つ以上が求められる。 |
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3月に入り、CNIPAは被申請商標に対する3年間不使用の調査証拠の要件をさらに強化した。上述の証拠に加え、「押印または署名のある誓約書を提出し、追加提出する事情説明書及び提供資料が真実、正確、かつ完全であることを保証する」ことも要求される。かつ、具体的な検索内容についてもさらに明確化が図られ、被申請商標の登録者名称、被申請商標の名称、および被申請商標の名称+指定商品・役務をそれぞれ検索することが要求される。 |
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4月に入り、CNIPAは前述の誓約書に加えて、申請人(及び代理機関)に対し、「私(及び代理機関)は、中国国家知識産権局に対し、真実の取消申請人その他の重要事実を隠匿しておらず、申告した事項及び提供した書類が真実、正確、かつ完全であることを保証する』という内容の誓約書に押印または署名をした上で提出することを要求し、同時に、当該取消案件に関連する新規商標登録出願や拒絶査定不服審判の書類などの提出も求めるようになった。 |
改訂の目的
2025 年の年初から生じた「3年不使用取消」の申請要件の厳格化は、広範な関心を集めた。上記のような数ヶ月にわたる実務の変化を経て、2025 年5 月 26 日、商標局は 2023 年 3 月に公布された《正当な理由のない登録商標の連続3年間不使用による取消申請に関するガイドライン》を改訂した。
今回の改訂は、「3年不使用取消」制度の立法趣旨(即ち、「3年不使用取消」制度を通じて商標権者に登録商標を合法的かつ実効的に使用させることを促す)を実現しつつ、「挙証責任の転換」ルールを利用して、「3年不使用取消」手続を濫用し市場秩序を乱す悪質な申請行為を抑制することを目的としている。これにより、行政資源の浪費を防ぎ、商標権者の正当な権益を保護することが期待される。
2 . 新規則の要点
法的根拠
《商標法》第 49 条では、「登録商標が正当な理由なく継続して3年間使用されなかったときは、如何なる単位又は個人も、商標局に当該登録商標の取消を請求することができる」と規定されている。この規定が「3年不使用取消」制度に基本的な法的根拠を提供している。
《商標法実施条例》第 66 条では、「登録商標が正当な理由なく継続して3 年間使用されなかったときは、如何なる単位又は個人も商標局にその登録商標の取消を申請することができ、申請を提出する際に、関連情況を説明しなければならない」と規定している。この規定は、「3年不使用取消」の申請条件に対する制限と理解できる。
新規則の要点
今回改訂された申請ガイドラインでは、申請人は取消理由において被申請商標が正当な理由なく継続して3 年間使用されていない状況を説明し、かつネット検索結果や市場調査報告などの初期調査証拠を添付するべきであることが明確化された。
改訂版の申請ガイドラインによれば、初期調査証拠には、以下のものを含むがこれに限らない。即ち、被申請商標の登録者の経営範囲又は業務範囲、経営状況又は存続状態などの情報、被申請商標の市場調査状況(専門的な調査プラットフォームに限定されない) 、被申請商標の登録者の公式ウェブサイト、WeChat 公式アカウント、EC プラットフォーム、実店舗や生産拠点などのネット調査、市場調査、実地調査により得られた証拠資料。
新規則施行後の実務の変化
新規則の導入により、申請人に求められる挙証責任が明確化された一方で、初期調査証拠に関する規定には依然として不明確な点が残されている。改訂版のガイドラインでは「初期調査証拠は以下のものを含むがこれに限らない」と規定されており、提出する証拠は明示的に列挙された情報を網羅していることが前提となり、さらに追加の証拠が必要となる可能性がある。新規則を厳格に適用する場合、規定で明確に言及されている実地調査に関する証拠が含まれていない申請は、要件を満たすかどうか、補正通知の対象となるか、あるいは不受理となるかが不透明な状況である。
しかし、6 月以降の審査実務から見れば、商標局が重点的に取り締まる5 種類の悪質な「3年不使用取消」申請を除き、申請人に求められる証拠の水準はここ数ヶ月に比べて緩和される傾向にある。補正通知の発行件数が減少しただけでなく、挙証責任も大幅に軽減され、初期調査証拠に関する審査が柔軟化し、実地調査報告の提出も求められていない。
3. 実務上のアドバイス
商標「3年不使用取消」申請の証拠要求には依然として不確実性があるが、申請を順調に進めるため、これまでの実務経験と新規則への理解に基づき、以下の関連証拠を収集・提出することを勧める。
1) 被申請商標の登録者の基本情報
(1)企業信用情報プラットフォーム(国家企業信用情報公示システム、天眼査、企査査など)を利用し、登録者の事業範囲や存続状態などの基本情報をプリントし、登録者の営業許可証や年度報告書などの公式文書をダウンロードする。
(2)業界データベースを活用し、登録者の業界資格の有効性を確認する(例えば、医薬品・化粧品の届出情報は国家薬品監督管理局の公式サイトを利用して確認する)。
2)被申請商標の使用状況調査
(1) 被申請商標の登録者の企業公式サイト(特に製品・役務の紹介ページに被申請商標に関連する内容があるか、実際の事業内容が取消対象商品・役務と関連するかを重点確認する)、ソーシャルメディア(WeChat 公式アカウント、TikTok、微博)を調査し、実際の経営状況を把握する。
(2)公開ルートで登録者の納税記録、社会保険加入者数(一部地域では行政プラットフォームを通じて開示を申請することができる)を入手する。長期にわたる零申告や加入者 1~2 名の場合は、実質的な事業非実施の間接的証拠となり得る。
3) プラットフォーム検索証拠(3 つ以上のプラットフォーム、各プラットフォームともホームページから連続 5 ページ分の全画面内容を提出、検索日時・プラットフォーム名・検索キーワードを表示必須)
(1)総合ネットワークプラットフォーム:百度 Baidu、360、搜狗 Sogou、Bing などの主要検索エンジン
(2) EC プラットフォーム:淘宝 Taobao、天猫 Tmall、京東、ピンドゥオドゥオ、1688 など
(3)業界特化型プラットフォーム: 美団メイトゥアン、大衆点評(サービス類商標向け)など
(4)ブランド公式サイト/オウンドメディア: 登録者の公式サイト、TikTok 店舗、WeChat ミニアプリなど
(5)ソーシャルメディア: WeChat、微博、小紅書Rednote など
4)被申請商標の登録者が保有する商標の状況
中国商標網を利用して被申請商標の登録者が保有する全商標を検索できる。当該登録者が多数の商標を保有する場合、特に「不使用取消」の記録があるかどうかを重点的に調査する。「不使用取消」の記録が存在する場合は、当該登録者が商標を実際に使用しない傾向があることを示す根拠となり、本件被申請商標も使用を目的としていないと推論できる。記録がない場合でも、保有商標数が登録者の事業規模と明らかに整合しない場合は、被申請商標が使用されていないと推測できる。
5) 誓約書
新規則では誓約書の提出が必須とは明記されていないが、リスク回避の観点から、やはり誓約書を提出したほうが良いと考える。実名の申請人である場合は、「私及び代理機関は、国家知識産権局に対し真実の取消申請人その他の重要事実を隠匿しておらず、申告した事項及び提供した資料が真実、正確かつ完全であることを保証する」と誓約する。ダミーの申請人である場合は、前半部分(「真実の取消申請人…隠匿しておらず」)を削除した誓約書を作成することができる。
6) 実地調査報告(補正通知受領後の対応を推奨)
新規則公布以降の審査実務から見れば、商標局が実地調査報告の追加提出を求めた事例は現時点まで発見されていない。CNIPA の担当者は、「『3年不使用取消』申請人と被申請商標の登録者が同一地域に所在する場合、実地調査が必要となる。実地調査が行われていない場合は、その旨の説明文を提出できるが、受理の可否は案件ごとに判断される」との見解を示している。したがって、当初は実地調査を実施せず、補正通知を受領した段階で適切に対応することを提案する。
4.総括
新規則の導入により、商標の「3年不使用取消」手続きにおける双方の権利と義務のバランスが改善され、従来の「挙証責任の転換」に起因する手続き濫用現象を大幅に抑制できる見込みである。それと同時に、商標の「3年不使用取消」申請は複雑で一定の難易度を有する業務であるため、申請人は、申請成功率の向上させるために、現行の規定に基づき申請書類及び証拠書類を可能な限り完璧に整備するだけでなく、CNIPA の最新の実務動向や政策変更を注視し、適切に申請戦略を調整する必要がある。
●2025 年 11 月 10 日に公表された専利審査指南改正内容の詳細について
- 1.改正の概要
国家知的財産局は、2025 年 11 月 10 日付にて、特許・実用新案・意匠の審査・審判における運用ルール及び審査基準を定めた「専利審査指南」の改正内容を公表し、2026 年 1 月 1 日より施行することを発表した。この改正については、2025 年 4月 30 日に改正案が公表され、パブリックコメント募集が行われている。本稿では、改正案からの修正内容を指摘しつつ、本改正の具体的な内容を紹介する。
2.主な改正ポイント
本改正は、形式審査、実体審査、PCT 出願、審判、手続き関連の全分野におよび、主に以下の18 項目の改正ポイントを含む。人工知能(AI) 等に関する発明やビットストリームを含む発明の審査基準・審査事例が追加されたことが、特に注目される。
また、願書に記載すべき発明者情報の追加や、進歩性の審査基準の追加、特許期間調整の延長期間算定ルールの一部変更等も、実務への影響が比較的大きな項目と言える。
【形式審査部分】
(1)発明者の記載への要求の厳格化
(2)願書に記載すべき発明者情報の追加
(3)分割出願の優先権主張に関する運用の整理
【実体審査部分】
(4)保護対象外となる「植物品種」の定義の明確化
(5)特実同日出願制度の一部改変
(6)進歩性の審査基準・審査事例の追加
(7) AI 等関連発明の審査基準・審査事例の追加
(8)ビットストリームを含む発明の審査基準・審査事例の追加
【PCT 出願関連】
(9)国内移行時の優先権譲渡証への署名者の明確化
【復審・無効審判関連】
(10)審決における記載の簡略化・省略
(11)他人名義での無効審判請求の禁止
(12)無効理由の「一事不再理」範囲の明確化
(13)無効審判中の訂正に関する運用の明確化
【手続き関連】
(14)配列表のページ加算の廃止
(15)オフィシャルフィー返還請求のルール変更
(16)加速審査の明文化
(17)国際出願の登録証への記載内容の明確化
(18)特許期間調整の延長期間算定ルールの一部変更
3.改正内容
【形式審査部分】
(1)発明者の記載への要求の厳格化
本改正では、AI 技術の発展を受けて、専利出願の願書に記載される発明者は自然人でなければならないこと、「発明創造の実質的特徴に創造的な貢献をした人」との定義を満たす真の発明者でなければならないことが強調された。発明者の資格は通常は審査の対象にならないが、真の発明者ではないとの証拠がある場合は除く、との規定も追加された。
(2)願書に記載すべき発明者情報の追加
現行の願書では、第一発明者についてのみ、身分情報として、国籍と、中国籍の場合には身分証明書番号の記入が求められている。本改正では、発明者全員について身分情報の記入が必要となることが規定された。
これについて、先日実施された知的財産局による改正説明会の説明によれば、改正の趣旨としては、外国籍も含む全発明者に対し身分情報(国籍及び身分証明書番号)の記入を要求するものである。しかしながら、知的財産局に確認したところ、2026年 1 月 1 日から当面の間は、中国籍の発明者についてのみ国籍及び身分証明証番号の記入が必要とされ、外国籍の発明者については国籍のみの記入が必要とされる、とのことである。(将来、この運用に変更があった場合には、すぐに皆様にお知らせします。)
また、4 月に公表された改正案では、願書に記載する発明者の身分情報、出願人の身分情報及び連絡先情報が正しいものであるかについて、代理事務所が責任を有するとの規定があったが、本改正では、「代理事務所は出願人の身分情報及び連絡先情報が真実のものであるか確認しなければならない」と規定された。
(3)分割出願の優先権主張に関する運用の整理
本改正では、優先権主張を伴う親出願から分割された分割出願において、出願時に優先権主張がなされなかった場合、「優先権主張をしなかったとみなす」旨の通知書が発行されることが規定された。出願人は、当該通知書の受領日から 2 か月以内に所定の回復料を納付して、優先権の回復を請求することができる。
従来の実務でも、親出願が優先権主張を伴う場合、分割出願で優先権主張をしなかったとしても、後日に優先権の回復が認められていた。本改正は、こうした既存のルールを変更するものではなく、回復プロセスを明確化したものに過ぎない。
【実体審査部分】
(4)保護対象外となる「植物品種」の定義の明確化
専利法第 25 条第1項第4号では、「動物及び植物品種」は特許権による保護の対象外と規定されている。本改正では、この「植物品種」について、「人工的に選抜育種された、または発見後に改良された、形態的特徴および生物学的特性が一致し、遺伝形質が相対的に安定している植物群」と定義した。この定義は、中国の「種子法」及び「植物新品種保護条例」における定義と一致している。
本改正は、「種子法」及び「植物新品種保護条例」との間で用語の定義を統一すると同時に、定義を満たす植物新品種は、「種子法」に規定された植物新品種権による保護の対象となる一方、定義を満たさない育種の中間材料等は、専利法の保護対象になり得るという、両法の補完関係を明確にしたものである。
本改正では、更に具体的に、自然界において発見された、技術的処理を経ていない天然の野生植物は、専利法第 25 条第 1 項第 1 号に規定される「科学上の発見」に該当し、特許権による保護の対象外だが、野生植物が人工的な選抜育種または改良を経ており、産業上の利用価値を有する場合には、「科学上の発見」には属さず、保護対象となり得ることが明記された。
なお、知的財産局が 2025 年 12 月 4 日に公表した「専利審査指南改正内容の解説」には、「植物品種」であるか否かの更に具体的な判断例が示されているが、ここでの紹介は省略する。
(5) 特実同日出願制度の一部改変
同一出願人が同じ内容の発明・考案について同日に特許・実用新案の両方を出願することを認める、いわゆる特実同日出願制度では、出願人は、同日に同じ発明・考案について、それぞれの願書において同制度を利用することを声明して、特許出願と実用新案出願とを行うことが可能である。
現行の制度では、実用新案出願が設定登録された後、特許出願の審査において、その他の登録要件が全て満たされていると判断された際に、出願人に対し、実用新案権を放棄するか特許出願を補正して二重特許の問題を回避するかのいずれかの選択を求める通知が発行される。出願人が通知への応答時に実用新案権の放棄を表明した場合、特許権の設定登録がなされ、実用新案権は特許権の設定登録の日から放棄される。
これに対し、今般の改正では、まず、同日に同じ発明・考案について特許出願と実用新案出願とをしておきながら、それぞれの願書において同制度の利用を声明しなかった場合、専利法第 9 条 1 項に規定の重複特許の拒絶理由に該当するものとして処理されることが確認された。次に、同制度の利用を声明して出願した場合、特許出願について審査により拒絶理由が発見されなかった場合に、出願人に対し、期限内に実用新案権の放棄を宣言するようにとの通知が出され、出願人が実用新案権を放棄すれば、特許権の設定登録がなされ、実用新案権は特許権の設定登録の日から放棄されること、出願人が実用新案権の放棄に同意しなければ、特許出願は拒絶されることが規定された。また、出願人が期限内に応答しない場合には、特許出願は取り下げたものとみなされる。
先日実施された知的財産局による改正説明会によれば、改正審査指南施行後は、特実同日出願制度の利用を声明して出願した場合、先に登録された実用新案権を放棄しない限り、たとえ出願過程で請求項の内容を実用新案と異なるものに補正したとしても、特許出願を権利化することはできなくなる、とのことである。そして、この特実同日出願に関する扱いは、出願日に関係なく、2026 年 1 月 1 日以降に登録手続きをとる全ての出願に適用される。ただし、具体的な運用については明らかにされておらず、改正審査指南施行後の知的財産局の取扱いが注目される。
知的財産局の解説によれば、特実同日出願制度は、当初、審査待ちの特許出願が積滞し、権利化に時間がかかるとの問題を解決すために導入された。しかし、現在では AI、ビックデータ、遺伝子技術等の高度な技術に関する出願が増加して同制度の利用件数が減少している。また、特許出願の審査期間が大幅に短縮され、更に優先審査等の審査加速方法も導入されたために、同制度の利用の必要性も薄れてきている。今般の審査指南改正は、特実同日出願の手続き面の要件を強化して利用者の選択の自由度を下げることで、制度趣旨に則った利用のみを促す目的があると思われる。
(6) 進歩性の審査基準・審査事例の追加
進歩性審査基準の中に、「技術的課題の解決に寄与しない特徴は、たとえ請求項に書き入れたとしても、通常、発明の進歩性に影響を与えることはない。」との一文が追加され、次の具体例が追加された。
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【例】
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上記の改正は、現在の進歩性の審査基準を踏襲するものではあるが、今後の進歩性の審査に少なからぬ影響を与える可能性がある。
中国の進歩性において、ある技術的特徴に基づく進歩性が認められるためには、通常、当該特徴により優れた技術的効果がもたらされることが求められる。更に、化学分野では、当該効果が実験データ等により証明されていることが求められる。即ち、従来の進歩性審査においても、審査官は、発明の技術的課題の解決に寄与する特徴を重視する審査を取ってきた。上記の審査基準の改正は、このような従来の審査方針に明文の根拠を与えるものである。改正後、審査官は、より大きな裁量権をもって、発明による技術的課題の解決に寄与する技術的特徴と、寄与しない技術的特徴とを区別し、前者のみを対象に進歩性の審査を進めることが可能になる。
改正後の審査基準に基づき、請求項に記載された特定の技術的特徴が、発明による課題の解決に寄与しないと判断された場合、出願人は、まず、審査官が認定した技術的課題の妥当性を検討し、認定が誤っていると考えた場合には、これに反論する必要がある。次に、当該技術的特徴が発明による課題の解決に寄与しないとの認定に対し、明細書の記載や補充の実験データ等を用いて反論することができる。そのため、改正後の実務では、明細書に、それぞれの技術的特徴とそれによる効果の関係を説明しておくことが、一層重要になる。
更に、上記の規定は、発明の解決課題と関係のない特徴を追加する補正が行われた出願を、審査官が拒絶する際の根拠ともなり得る。例えば、進歩性欠如の拒絶理由に応答する際、直接拒絶査定となることを避けるために、請求項に重要ではない特徴を付け加える補正を行った上で、意見書で審査官の認定に反論することは、実務上、比較的頻繁に行われている。改正後は、上記の規定を根拠に、このような出願が直接拒絶される可能性が高まることも考えられる。知的財産局は現在、審査期間の短縮に積極的に取り組んでおり、本改正の目的には、審査資源の節約と審査スピードの向上も含まれることが明らかである。
(7) AI 等関連発明の審査基準・審査事例の追加
今回の改正で最も注目されるポイントの一つは、AI等関連発明の審査基準が拡充されたことである。
従来、審査指南第二部分第九章第6節に設けられていた「アルゴリズム特徴又はビジネスの規則及び方法特徴を含む特許出願の審査関連規定」と言うセクションの名称が、「人工知能やビッグデータ等に関する、アルゴリズム特徴又はビジネスの規則及び方法特徴を含む特許出願の審査関連規定」へと変更され、更に、公序良俗要件、進歩性、実施可能要件に関する審査基準や審査事例が拡充された。今回追加された内容の一部は、2024 年 12 月に知的財産局が公表した「AI 関連発明の特許出願ガイドライン(試行)」に記載されていた内容を踏襲している。
具体的な改正内容は、以下①~④の通りである。
① 審査原則の明確化
従来、「アルゴリズム特徴又はビジネスの規則及び方法特徴を含む発明の審査の対象は請求項に記載された発明であると規定されていたが、更に、「必要時には明細書の内容に対して審査すべき」との規定が追加された。この変更は、これまでの審査の原則を明確化するものに過ぎない。
② 公序良俗違反要件の審査基準・審査例の追加
新たに、専利法第 5 条第 1 項に規定の公序良俗要件に関する審査基準が設けられ、「アルゴリズム特徴又はビジネスルール・方法特徴を含む特許出願が、データ収集、ラベル管理、ルール設定、レコメンデーションなどにおいて、法律違反、公序良俗違反、または公共の利益を害する内容を含む場合、特許法第 5 条第 1 項の規定に基づき、特許権を付与することはできない。」ことが規定された。
更に、専利法第 5 条第 1 項違反の例として、以下の2つの審査事例が追加された。AI 等関連発明に限らず、中国の特許審査では、「個人情報保護法」等の現行の中国の他の法規に反する発明は、公序良俗要件違反と判断される点に注意が必要である。
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【例1】 ビッグデータに基づく商業施設内のマットレス販売支援システム
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【例2】 無人運転車両の緊急時意思決定モデルの構築方法
請求項:
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③ 進歩性の審査例の追加
AI 等関連発明の進歩性の審査例として、以下の二例が追加された。審査基準そのものには、特に変更はなく、事例のみの追加である。
今回追加された2例は、いずれも AI アルゴリズム・モデルを特定の技術分野に応用するものである。即ち、引用発明と応用シーンは異なるが、アルゴリズムやモデルは同一である場合の進歩性判断の事例が示されている。知的財産局の「審査指南改正内容の解説」では、これらについて、「発明にかかるアルゴリズムやモデルが、従来技術に対して、応用シーンや処理対象は異なるものの、アルゴリズムのフローやモデルのパラメータ等の面で実質的な改変を行っていない場合、通常は進歩性を有しない」と説明されている。
以下の例 18 の「画像から船舶の数を識別する方法」では、引用文献に開示された樹上の果実の数を識別する方法と比べ、画像情報のマーキング、データセットの区分け、モデルの訓練等のステップが特に変更されていないため、船舶分野に特有の具体的な技術的課題を解決しているとは言えず、進歩性を有しないと判断された。
例 19 の「鉄スクラップの等級を分類するためのニューラルネットワークモデルの構築方法」は、実際の裁判例に基づく例である。例 19 の方法は、引用文献記載の発明と、鉄スクラップの分類という応用シーンは類して いるものの、引用発明とは異なる課題を解決するために、モデル訓練過程において畳み込み層およびプーリング層の経路数や階層設定を調整し、引用発明とは異なる効果を実現している。そのため、AI アルゴリズムやモデルを調整して、特定の応用分野の技術的課題を解決し、有利な効果を得るものであり、進歩性を有すると判断されている。
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【例 18】 船舶の数を識別する方法
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【例 19】 鉄スクラップの等級を分類するためのニューラルネットワークモデルの構築方法
当該画像データ特徴の抽出は、画像画面の画素点マトリックスデータに対して畳み込みニューラルネットワークの畳み込み計算を行った集合を抽出するものであり、畳み込み層または畳み込み層とプーリング層で構成される複数の経路の出力集合により実現される、画像中の物体の色、エッジ特徴、およびテクスチャ特徴の抽出と、画像中の物体のエッジとテクスチャとの間の関連特徴の抽出とを含み、
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④ 実施可能要件に関する審査基準・審査事例の追加
AI 等関連発明の明細書の記載要件について、発明が AI モデルの構築または学習に関わる場合には、一般に、明細書において、モデルに必要なモジュール、階層構成または接続関係、訓練に必要な具体的ステップやパラメータ等を明記載する必要があることが規定された。更に、具体的な技術分野や場面に AI モデルやアルゴリズムを応用する発明に関しては、一般に、明細書において、モデルまたはアルゴリズムがどのようにその技術分野や応用場面と結びついているか、アルゴリズム又はモデルの入出力データがどのように設定されているかを明確に記載することで、その内在的な関連性を示し、当業者が明細書の記載内容に基づいて当 該発明を実施可能とする必要があることが規定された。
これらは、AI 等関連発明の明細書のブラックボックス問題を解決するための規定である。
また、これに関連し、以下の2つの審査事例が追加された 。
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【例 20】 顔特徴の生成方法
請求項: 前記第一の畳み込みニューラルネットワークには、更に、顔画像の特徴領域を特定するために用いられる、空間変換ネットワークを備え、
明細書の関連段落:
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【例 21】 生物情報に基づく癌予測方法
を含む方法。
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(8)ビットストリームを含む発明の審査基準・審査事例の追加
本改正では、上記(7 )で紹介した第二部分第九章第6節の「人工知能やビッグデータ等に関する、アルゴリズム特徴又はビジネスの規則及び方法特徴を含む特許出願の審査関連規定」に続く第7節として、「ビットストリームを含む発明の審査基準」が設けられた。
① 保護適格性に関する審査基準の追加
まず、保護適格性について、単純なビットストリームの請求項や、請求項の主題以外の実質的な全ての内容が単純なビットストリームに過ぎない請求項は、専利法第 25 条第 1 項第 2 号の「知的活動のルール及び法則」に該当し、特許保護の対象にならないことが規定された。例としては、「構文要素 A、構文要素 B、…… を含むことを特徴とするビットストリーム。」や、「構文要素 A、構文要素 B、……を含むことを特徴とするビットストリームの生成方法。」という請求項が挙げられている。
これに対し、デジタル映像のエンコード/デコード分野において、ある特定のビットストリームを生成する動画エンコード/デコード方法が、専利法第 2 条第 2 項に規定された「発明」に該当する場合、当該エンコード/デコード方法によって限定される、当該ビットストリームの記録・伝送方法や、それを記録するコンピュータ可読記録媒体は、記録・伝送リソースの最適な配置などを実現し得るものであるため、専利法第 2 条第 2 項に規定の「発明」に該当し、特許保護の対象となることが明記された。
② 実施可能要件に関する審査基準の追加
特定の動画エンコード/デコード方法によって生成されたビットストリームを含む特許出願の明細書は、当該特定の動画エンコード/デコード方法について、当業者が実施できる程度に明確かつ完全に説明しなければならないことが規定された。
また、当該ビットストリームの保存・伝送方法、ならびに当該ビットストリームを記録するコンピュータ可読記録媒体を保護対象とする場合には、明細書においてそれに対応する説明を行う必要があることも規定された。
③ 請求項の記載方法に関する審査基準の追加
特定の動画エンコード/デコード方法によって生成されたビットストリームを含む特許出願では、方法、装置、およびコンピュータ可読記録媒体の請求項を作成することができること、また、一件の出願の中では、一般に、 当該ビットストリームを生成する特定の動画エンコード方法の請求項を基礎とし、当該特定の動画エンコード方法の請求項を引用する、またはその全ての特徴を包含する形式で作成するべきことが規定された。
更に、改正では、許容される請求項の形式の具体例が示された。
| 【例1】 【請求項1】 映像符号化方法であって、 ・・・画像フレームに分割するステップと、 ・・・エントロピー符号化するステップと、 を含むことを特徴とする方法。 【請求項2】 映像符号化装置であって、 ・・・画像フレーム分割ユニットと、 ・・・エントロピー符号化ユニットと、 を含むことを特徴とする装置。 【請求項3】 映像復号化方法であって、 ・・・エントロピー復号化するステップと、 ・・・画像フレーム出力ステップと、 を含むことを特徴とする方法。 【請求項4】 映像復号化装置であって、 ・・・エントロピー復号化ユニットと、 ・・・画像フレーム出力ユニットと、 を含むことを特徴とする装置。 【請求項5】 ビットストリームを記憶する方法であって、請求項 1 に記載の映像符号化方法を実行してビットストリームを生成し、前記ビットストリームを記憶することを特徴とする方法。 【請求項6】 ビットストリームを伝送する方法であって、請求項 1 に記載の映像符号化方法を実行してビットストリームを生成し、前記ビットストリームを伝送することを特徴とする方法。 【請求項7】 コンピュータプログラム/コマンド及びビットストリームが記憶されている、コンピュータ可読記録媒体であって、 前記コンピュータプログラム/コマンドがプロセッサにより実行されたときに、請求項 1 に記載の前記映像符号化方法によるビットストリームの生成が実現されることを特徴とする、コンピュータ可読記録媒体。 |
【PCT 出願関連】
(9 )国内移行時の優先権譲渡証への署名者の明確化
PCT 国際出願時に行われた優先権主張について、現在の審査基準では、当該 PCT 出願の出願人が、優先権基礎出願の出願人に含まれず、PCT 出願の出願人が優先権基礎出願の出願人からの譲渡・贈与等により優先権を得た場合、PCT 出願人は、中国国家知的財産局に対し、「譲渡人」が署名・捺印した証明書類を提出すべきであると規定している。本改正では、この署名・捺印者を、「譲渡人」から「優先権基礎出願の出願人全員」に修正した。この改正は、審査基準の他部分と記載を統一するものに過ぎず、実務の変更を伴うものではない。
【復審・無効審判関連】
(10)審決における記載の簡略化・省略
復審(拒絶査定不服審判)及び無効審判の審決について、現行の審査基準では、(1)書誌事項、(2)根拠条文、(3)審決の要点、(4)案件の経緯、(5)審決の理由、(6)結論、(7)添付図面の各部分を含むこと、更に、拒絶査定不服審判での取消審決では、(4)の案件の経緯部分を簡略化又は省略してよいことが規定されている。本改正では、「通常は、(1)~(7)の各部分を含む」と、より合議体の裁量にまかせた審決の記載ができることが規定され、それに伴って、「拒絶査定不服審判での取消審決では、(4)の案件の経緯部分を簡略化又は省略してよい」との規定が削除された。この改正は、実務の実質的な変更を伴うものではないと考えられる。
(11)無効審判請求人の適格性要件の厳格化
無効審判請求の不受理事由として、「無効審判請 求が審判請求人の真実の意思表示でない」場合が追加された。「審査指南改正内容の説明」によれば、実務において、他人の名義をかたって無効宣告請求する事象が発生しており、このような場合、しばしば審判請求書の署名を偽造したり、委任状などの関連資料を偽造したりする行為を伴うことが指摘されている。そして、この種の行為は誠実信用の原則に違反し、特許無効宣告制度の信用性および市場競争秩序を損なうものであるとされている。
今回の改正に先立ち、実務では、無効審判請求人の適格性の要件が厳格化している。最近の知的財産局の運用では、自然人の名義で無効審判請求を行った場合、審判請求後に、審判請求人の身分情報と、無効審判請求の意思表示とが真実であることの確認を求める補正通知書が発行される。対応方法としては、審判請求人本人が身分証明書を持って知的財産局窓口に出向いて手続きするか、公証人が審判請求人の身分を確認し、審判請求人が審判請求は真実の意思表示であると陳述し補正通知書添付の承諾書に署名するのを見届けたことを証明する公証書類を作成して提出することが必要になる。補正通知の受領から 15 日以内に、いずれかの手続きを完了しない場合、審判請求を取り下げたものとみなされる。
また、本改正内容の公表直後の 2025 年 11 月15 日に、無効審判請求人の適格性が論点となった審決が出さ れ、注目さ れている(審決番号:4W119542 号)。この件で、特許権者は、無効審判請求人が 1949 年生まれの台湾在住者であり、製薬や特許に関する学術・業務上の経験を有しないにも関わらず医薬関連特許の無効審判を複数提起しているため、無効審判請求は請求人の真実の意思表示ではなく無効であると主張した。審判請求人は、審判請求が真実の意思表示である旨を陳述した公証つきの宣誓書を提出したが、特許権者が、宣誓書の署名と審判請求時の委任状の署名とが別人によるものである可能性が高いとする筆跡鑑定書を提出したため、審決において、偽造された法的文書に基づく審判請求は無効であり、不受理処分とすると判断された。
上記の「審査指南改正内容の説明」の記載によれば、知的財産局は、この審決例のようなダミー請求人による審判請求を問題視していると考えられる。これをもって、直ちにダミーでの無効審判請求ができなくなるとまでは言えないが、今後、請求人の適格性の審査が厳格化することが予想される。
(12)無効理由の「一事不再理」範囲の明確化
既に無効審判の審決が出された無効理由と「同じ理由」だけでなく、「実質的に同じ理由」に基づく無効審判請求についても、一事不再理により不受理処分とすることが規定された。「実質的に同じ理由」と判断される例として、「審査指南改正内容の説明」には、以下の2つの具体例が挙げられている。
例1:
先の無効審判請求理由: 請求項 1 の特徴 B は複数の実施方式を概括しているが、明細書にはそのうちの一つの実施方式しか記載されていないためサポート要件違反である。
先の無効審判の審決: 請求理由不成立(サポート要件を満たす)
後の無効審判請求理由:請求項 1 の特徴 B は機能的限定を含むものであり、当業者はその機能が明細書に記載されていない他の代替手段によっても実現し得ることを理解できないため、明細書のサポート要件違反である。
例2:
先の無効審判請求理由:請求項 1 は証拠 1 及び周知技術に対して進歩性を有しない。
先の無効審判の審決: 請求理由成立(進歩性なし)
後の無効審判請求理由:請求項 1 は当該証拠 1に対して新規性を有しない。
上記の2例では、いずれも、先の無効審判請求理由について審決での判断が示された時点で、後の無効審判請求理由に対する判断は明らかであり、「実質的に同じ理由」と判断されている。
この改正は、権利者との紛争を引き延ばす手段として、実質的に同じ理由に基づき複数の無効審判を提起する行為を抑制しようとするものであり、これも審査リソースの節約と効率化を目的とする改正である。
(13)無効審判中の訂正に関する運用の明確化
無効審判中の訂正に際しては、全文差し替えページ及び訂正対照表の提出が必要であることが明記された。
更に、同一無効審判中に複数回の訂正書を提出し、そのいずれもが訂正の要件を満たす場合、最後に提出された訂正書を審理対象とし、それ以前の訂正書は審査対象とされないことが規定された。
【手続き関連】
(14)配列表のページ加算の廃止
所定の形式の電子データで提出された配列表については、明細書のページ数として計算せず、出願料金のページ加算の対象とならないことが規定された。ただし、紙媒体で提出された配列表については、従来通りに追加費用の計算がされる点に注意すべきである。
上記の変更と合わせて、PCT 出願の国内段階のオフィシャルフィーの一覧から「核酸配列および/またはアミノ酸配列表が明細書の独立した一部として 400ページを超える場合、その配列表は 400 ページとして計算する」との項目が削除された。
(15)オフィシャルフィー返還請求のルール変更
現在の審査基準において、専利局側が自発的に費用返還を行うと規定されている以下①~③の状況について、返還には当事者の請求が必要とのルールに変更された。理由は、費用返還の正確性及び迅速性を担保し、当事者の利益を守るためとされている。したがって、①~③の状況において、改正後は、当事者が請求を行わなければオフィシャルフィーが返還されない点に注意が必要である。
① 実体審査段階移行通知発行前に出願がみなし取り下げとなった場合、分割出願が既にみなし取下げとなった場合、又は出願人による取下書が認められた場合、当事者は既に納付した審査請求料の返還を請求できる。
② 当事者は、特許権利期間の満了後、又は権利全部無効の審決の公告後に収めた年金について、返還を請求できる。
③ 権利回復プロセスが起動され、その請求を却下する決定が下された場合、当事者は、既に納付した権利回復請求料及び関連費用の返還を請求できる。
(16)加速審査の明文化
出願人の請求により、出願に対して優先審査、加速審査、又は遅延審査を行ってよいことが明記された。
また、知的財産権保護センター、迅速権利維持センターでの予備審査合格後に行われた特許出願については、加速審査に関する規定を満たす場合、加速審査を行ってよいことも規定された。
この優先審査、加速審査については、中国国内の出願人を中心に利用が拡大しており、本改正は、これを明確に規定したものである。
(17)国際出願の登録証への記載内容の明確化
国際出願及びその分割出願の登録証に記載される、「出願時の発明者・設計者・出願人」は、「国際出願の中国国内移行時又は分割出願提出時の発明者・設計者・出願人」であることが明記された。
(18)特許期間調整の延長期間算定ルールの一部変更
専利法実施細則第 78 条第3項第1号では、「実施細則第 66 条の規定に従い専利出願書類を補正した後に専利権が付与された場合の、復審手続きに起因する遅延」は、「合理的な遅延」期間であるため、特許期間延長の対象にならないと規定している。
本改正では、復審中に補正しなかった場合でも、審判請求人が拒絶査定受領後に提示した新たな理由や証拠により拒絶査定が覆された場合には、復審に要した期間が、特許期間延長の対象にならないことが明記された。
4.最後に
本改正は、6 月 15 日まで行われた改正案に対するパブリックコメント募集から比較的短期間でまとめられ、改正案からの変更も比較的小範囲に留められた。実務の大きな変化を伴わない確認的な改正点も多いが、特実両日出願制度の変更や無効審判請求人の適格性要件の厳格化等については、実務におよぼす影響の範囲が不明であり、今後の知的財産局の運用が 待たれる。これらの項目については、弊所の実務の中で情報を収集し、まとまった段階で皆様に報告させて頂きます。