NewsLetter Vol. 16(2020年3月)

ビジネスモデル関連発明審査指南改正/商標侵害判定標準/専利権侵害紛争行政決定の処理指南【中国】【特許】【商標】

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Shangcheng NewsLetter Vol. 16(2020-03)

SHANGCHENG & PARTNERS Newsletter Vol. 16 添付資料

 

  • <尚誠ニュース>
    新型コロナウイルス感染症に関する弊所対策
    弊所所長龍淳が中華全国専利代理人協会副会長に就任
    <中国知財ニュース>
    2019 年の知的財産権に関する主要統計データを発表
    中国特許証書の電子化が始まる
    国家知識産権局が「専利権侵害紛争行政決定の処理指南」を発行
    商標侵害判定標準について
    <特集>
    アルゴリズム及びビジネスモデルを含む発明に関する審査指南の改正について

 

  • <尚誠ニュース>
    新型コロナウイルス感染症に関する弊所対策
  •  新型コロナウイルスが発生して以来、日本のお客様方からはあたたかいお見舞いのお言葉をいただき誠にありがとうございました。


  •  弊所では、政府の要請に従い、在宅勤務を含め思いつく限りの感染防止対策をとった上で、最大限良いサービスをご提供できるよう努めておりますが、お気づきの点などがございましたらご遠慮なくお申し付けください。


  •  現在、日本でも新型コロナウイルスによる感染者が増え、生活面や業務面での影響も生じているとの報道にふれ、私共も大変心を痛めております。


  •  弊所では、可能な限りお客様のご事情にあわせた対応をとらせていただきたいと存じておりますので、お困りのこと等がございましたらぜひご相談ください。


  • 弊所所長龍淳が中華全国専利代理人協会副会長に就任

  •  2019 12 19 日、中華全国専利代理人協会第十回全国会員代表大会が北京で開かれ、全国各省・各市の専利代理人協会代表が 300 人ほど参加しましたが、本代表大会にて、弊所所長龍淳が中華全国専利代理人協会の副会長に選任されました。

  • <中国知財ニュース>
    2019 年の知的財産権に関する主要統計データを発表
  •  2020 年 1 月 14 日、国家知識産権局は 2019 年の専利(特許・実用新案登録・意匠登録)、商標登録、地理的表示、集積回路配置設計登録等の統計データを発表した。


    1.専利(特許・実用新案登録・意匠登録)について
     2019 年の中国における発明特許の出願件数は合計 140.1 万件、発明特許の登録件数は合計45.3 万件であった。発明特許の登録件数の内、中国国内出願人によるものが 36.1 万件で、その内34.4 万件が職務発明で 95.3%を占めるものであった。また、中国発明特許登録件数ランキングの第 1 位はファーウェイ技術有限公司(4,510 件)、第 2 位は中国石油化工股フン有限公司(シノペック)(2,883 件)、第 3 位は OPPO 広東移動通信有限公司(2,614 件)であった。


  •  2019 年の外国出願人による中国発明特許出願件数は 15.7 万件で、出願件数の多い順に日本(4.9 万件)、米国(3.9 万件)、ドイツ(1.6 万件)が続いており、それぞれ前年に比べ 7.9%(日本)、1.5%(米国)、6.4%(ドイツ)増加している。


  •  2019 年に中国国家知識産権局が受理した特許協力条約に基づく PCT 国際特許出願は 6.1 万件で、前年同時期に比べ 10.4%増加した。その内、国内出願人によるものが 5.7 万件で、前年に比べ9.4%増加した。


  •  2019 年に審査を終えた発明特許出願は 102.3万件、実用新案登録出願は 198.1 万件、意匠登録出願は 74.4 万件であった。また、2019 年の発明特許の登録率は 44.3%となった(登録査定/全査定)。拒絶査定不服審判の請求件数は 5.5 万件、結審件数は 3.7 万件で、無効審判の請求件数は0.6 万件、結審件数は 0.5 万件となった。


    2. 商標について
     2019 年の商標登録出願件数は合計 783.7 万件、商標登録件数は合計 640.6 万件であった。その内、国内出願人による商標登録出願は 617.8 万件を占めている。


  •  また、2019 年の外国出願人による中国商標登録出願件数は 25.5 万件で、出願件数の多い順に、米国(5.4 万件)、日本(3.1 万件)、英国(2.4 万件)で、それぞれ前年に比べ 5.3%(米国)、21.2%(日本)、42.4%(英国)増加している。

  •  2019 年の中国出願人によるマドリッドプロトコルに基づく国際商標出願件数は 6,491 件であった。2019 年末までの中国出願人によるマドリッドプロトコルに基づく国際商標の有効商標登録件数は 3.8万件である。


  •  2019 年に商標審査を終えた案件の件数は合計825.3 万件で、商標の平均審査期間が 4.5 か月以内に短縮された。2019 年の商標登録率は 77.6%となった。商標異議申立請求件数は合計 14.4 万件、結審件数は 9.0 万件であった。また、商標の各種審判事件の請求件数は 36.1 万件、結審件数は33.7 万件となった。

    3. 地理的表示について
     2019 年、中国国家知識産権局は新しい地理的表示(GI)専用マークを公表した。2019 年には、地理的表示製品として 5 つの製品の保護が認められ、462 件の地理的表示商標が登録され、地理的表示製品専用マークを利用できる企業として 301 社が認められた。2019 年末までに、累計 2,385 個の地理的表示製品が認められ、累計 5,324 件の地理的表示商標が登録され、8,484 社の専用マーク使用企業が認められている。

    4.集積回路配置設計について

     2019 年の集積回路配置設計登録出願件数は8,319 件で、前年に比べ 87.7%増加した。また、2019 年には 6,614 件の集積回路配置設計登録について証明書が発行され、前年に比べ 73.4%増加した。

    5. その他の方面
     2019 年に処理された専利(特許・実用新案登録・意匠登録)権侵害紛争に関する行政処分件数は 3.9万件で、前年に比べ 13.7%増加した。また、2019 年の知的財産権のライセンスフィーの輸出入総額は 370 億 USD を超え、専利(特許、実用新案登録、意匠登録)及び商標について質権を設定した融資総額は 1,515 億人民元に達し、前年に比べ23.8%増加した。その内、専利(特許、実用新案登録及び意匠登録)について質権を設定した融資額は 1,105 億人民元で、前年に比べて 24.8%増加した。質権設定した項目は 7,060 件で、前年に比べて 30.5%増加した。


    中国特許証書の電子化が始まる
  •  中国国家知識産権局より、 2020 年 3 月 3 日より特許証書の発行形式を変更し、従来の紙による発行から電子発行に切り替える旨の公告が出された。


  •  この公告に従い、特許公告日が 2020 年 3 月3 日以降(3 月 3 日を含む)の特許電子出願については、電子特許証書のみが発行され、紙製の特許証書は発行されなくなったが、 紙製の特許証書が必要である場合、紙製の特許証書を取寄せることは可能である。 実用新案及び意匠についても同様の取り扱いとなる。


    国家知識産権局が「専利権侵害紛争行政決定の処理指南」を発行
  •  2019 年 12 月 26 日、国家知識産権局は、「専利権侵害紛争行政決定の処理指南」(以下、「指南」とする)を発行した。専利権侵害における行政処分の作業効率と作業の質の向上を図り、専利権の保護をさらに強化することを目的として発行されたも
    のである。

  •  「指南」は、本文と様式集の 2 部構成で、本文は全 5 章にまとめられている。第 1 章では専利権侵害紛争における行政決定の基本概念及び管轄、回避、代理、送達等について、第 2 章では案件受理、審査、証拠調べ、審理等の手続きについて規範化している。また、第 3 章では各種専利権侵害行為の認定について明確化し、第 4 章では証拠の基本概念、一般規則、典型的な証拠の審理認定について細かく規定している。第5章では様々な類型に属する専利権侵害判定及び侵害判定に関する原則について説明している。

  •  「指南」が発行され、専利権侵害紛争における行政処理の根拠となるものが示されたことにより、権利者にとって行政処分申請がより分かりやすく提出しやすいものとなり、また今後異なる地域間・管轄間における行政処分のばらつきの減少にもつながるであろうと期待されている。

 

  • 商標侵害判定標準について
  •  2019 年 12 月 18 日、国家知識産権局は「商標侵害判断基準(意見募集稿)」を公開し、パブリックコメント募集を行った。意見募集稿は全 8 章 58 条から成り、商標の使用、侵害判断と例外、侵害訴訟の中断、他人の合法的権利との衝突等に関する判断基準を含む。

  •  このうち最も重要なのは、商標法上の使用の定義に関する規定である。意見募集稿第 2 章では、商標の権利行使過程においては、最初に、被疑侵害行為が商標法第 48 条に規定の「商標の使用」に当たるか否かが判断されるべきこと、また、「商標の使用」にあたる行為の類型が明確にされた。また、意見募集稿では、侵害判断基準について、従来、司法解釈等に分散して規定されていた事項を取りまとめ、より詳細に規定している。

  •  

     まず、意見募集稿第 3 章第 15 条では、商標の類否は、権利者の登録商標とイ号商標とを比較することにより判断され、特に、権利者の登録商標の主要な識別部分と、イ号商標の主要な識別部部分とを比較するべきであって、権利者が実際に使用した商標とイ号商標との比較により判断してはならないことを規定している。また、商品・役務の類否判断についても、同様に、権利者の登録商標の指定商品・役務とイ号商品・役務とを比較すべきであり、権利者が実際に商標を使用した商品・役務とイ号商品・役務とを比較してはならないことを明記している。


  •  次に、「登録商標と同一又は類似の商標」であるか否かの判断について、意見募集稿第 3 章第 25条は、関連の商品・役務について一般的な知識、経験を有する関連公衆が商品・役務を選択する際に普通に加える程度の注意レベルを基準とし、隔離観察、並びに、全体対比と要部対比を採用し、商標の発音、字形、意味、配列方式等の構成要素を総合的に考慮して認定を行うことを規定している。

  •  この「商標侵害判断基準」が成立することにより、商標の権利行使が更に容易となり、侵害訴訟において参考にできるものとなることを期待する。


  • <特集>
    アルゴリズム及びビジネスモデルを含む発明に関する審査指南の改正について

 中国国家知識産権局は、2019 12 31 日に、AI、ブロックチェーン、ビジネスモデル等に関する特許出願の審査基準を定めた新たな「専利審査指南」の改正を通知した。改正された審査指南は、2020 2 1 日より施行された。


 本改正については、2019 11 12 日から 12 11日に中国知識産権局によるパブリックコメント募集が行われたが、その後の検討において大幅な内容の変更はなく、細部の記載を調整したのみでの正式施行となった。

 

 改正後は、現在、第一から第五節が設けられている「専利審査指南」第二部分第九章の「コンピュータープログラム関連特許出願の審査に関する若干の規定」の最後に、第六節として「アルゴリズム又はビジネスモデルの特徴を含む特許出願の審査関連規定」という新項目が追加される。


 この新項目には、AI、インターネットプラス(中国政府が推進するインターネット技術と他産業との連携)、ビッグデータ、ブロックチェーン等の領域の、一般にアルゴリズム又はビジネスモデル等の特徴を含む発明に関する特許出願に対する審査基準と審査事例、更に、明細書及びクレーム作成上の要求事項が記載されている。以下に、本改正の背景と、改正内容を紹介する。


1. 改正の背景
 本改正の背景には、近年、中国において AIやブロックチェーン関連の出願が急増しており、また、それらの技術が国家戦略上の重要技術と位置づけられていることがある。

 

 中国知識産権局が 2018 10 月に公表した『2017 年中国人工知能分野専利主要統計レポート』によれば、2017 年の AI 分野の登録件数は17,477 件であり、出願数が急増する前の 2010 年の 1,089 件と比較して、約 16 倍となっている。また、同様に民間シンクタンクである Blockdata 社が2019 11 月に公表した『2019 中国ブロックチェーン専利レポート』によれば、ブロックチェーン関連技術の出願件数は、2013 年までは毎年 5 件以下であったが、2018 年には 6,390 件、2019 年には
2,970 件となっている。また、中国国務院では、AIやブロックチェーン関連技術を国家戦略上の重要技術と位置付けて、その研究開発を推進している。


 このような背景から、これら新分野の技術に対する審査基準を確立するために策定されたのが、本改正で審査基準に追加された第二部分第九章第六節「アルゴリズム又はビジネスモデルの特徴を含む特許出願の審査関連規定」である。


2. 改正内容
 新たに追加された第六節「アルゴリズム又はビジネスモデルの特徴を含む特許出願の審査関連規定」は、「6.1 審査基準」、「6.2 審査事例」、「6.3明細書及びクレーム作成上の要求」の三部分に分かれている。


 「6.1 審査基準」では、専利法の保護対象(専利法第 25 条第 1 項第 2 号)、発明の定義(専利法第2 条第2 項)、及び新規性・進歩性(専利法第22 条第 23 項)の 3 つの登録要件について、審査基準を示しており、「6.2 審査事例」では、これら 3 つの登録要件に関する審査事例が示されている。最後の「6.3 明細書及びクレーム作成上の要求」では、関連技術分野の明細書及びクレーム作成に関する一般的な注意事項を述べている。


 「6.2 審査事例」に掲載された各事例と、「6.1審査基準」に示された各登録要件の審査基準との対応関係は以下の通りである。

 

事例

発明の内容

登録要件

判断結果

数学モデルの構築方法

専利法の保護対象(法25条1項2号)

対象でない

畳み込みニューラルネットワークモデルの訓練方法

発明の定義(法2条2項)

保護対象

シェア自転車の使用方法

保護対象

ブロックチェーンノード間通信の法及び装置

保護対象

消費還元方法

対象でない

電力使用特性に基づく経済景気指数の分析方法

対象でない

複数のセンサ情報に基づくヒューマノイドロボットの転倒状態検出方法

進歩性(法22条3項)

進歩性あり

協調共進化及び多種類遺伝的アルゴリズムに基づく複数ロボットの経路計画システム

進歩性なし

物流配送方法

進歩性あり

10

動的見解推移の可視化方法

進歩性なし

 なお、本ニュースレターの添付資料に、10 件の審査事例の全訳を掲載した。


2-1.審査基準及び審査事例
(1)原則
 「6.1 審査基準」は、3つの登録要件それぞれに対する審査基準の解説に先立つ総論として、AI、ブロックチェーン等の技術分野に対する一般的な審査基準を述べている。


 具体的に、これらの技術分野の審査では、請求項に記載される技術的特徴とアルゴリズム又はビジネスモデルの特徴とを切り離して判断するのではなく、それらの内容を一つの全体的な発明としてとらえた上で、技術的手段、技術的課題、及び技術的効果の観点から審査すべき、との原則が示されている。


(2)専利法の保護対象(専利法第 25 条第 1 項第2 号)
 アルゴリズム又はビジネスモデルの特徴を含む出願に対する、専利法の保護対象に属するか否かの判断に際しては、請求項が抽象的なアルゴリズム又は単純なビジネスモデルに関するものであり、技術的特徴を一切含まない場合は、専利法第 25条第 1 項第 2 号に規定された「知的活動のルール及び方法」とみなされ、専利法の保護対象にならない。逆に、請求項がアルゴリズム又はビジネスモデルだけではなく、技術的特徴を含む場合には、上記の「知的活動のルール及び方法」に該当せず、専利法による保護の対象となるとされている。


(3)発明の定義(専利法第 2 条第 2 項)
 出願に係る発明が上記(1)の登録要件を満たすと判断された場合、次に、専利法第 2 条第 2 項に規定の発明の定義を満たすか否かが審査される。


 記載された全ての特徴(構成要件)を考慮した際に、請求項に、「解決すべき技術的課題に対して自然法則を利用した技術的手段を採用することにより、自然法則に則った技術的効果を得ること」が記載されている場合、当該請求項に記載の発明は、専利法第 2 条第 2 項に記載の要件を満たすと判断される。


 例えば、請求項に記載されたアルゴリズムの各ステップが、解決すべき技術的課題と密接な関係を有する場合に、本要件を満たすと判断される。具体的には、アルゴリズムにより処理されるデータが、当該技術分野において確かな技術的意味を有しており、アルゴリズムの実行が自然法則を利用して技術的課題を解決し、技術的効果を得る過程を直接示しているような場合である。


(4)新規性・進歩性(専利法第 22 条第 23 項)
 アルゴリズム又はビジネスモデルの特徴を含む発明の新規性判断においては、技術的特徴だけではなくアルゴリズム又はビジネスモデルの特徴を含む、請求項に記載された全ての特徴を考慮すべきである。


 進歩性の判断にあたっては、技術的特徴と機能において支持しあい、相互作用を有するアルゴリズム又はビジネスモデルの特徴を、技術的特徴とともに、一つの全体として考慮すべきである。ここで、「機能において支持しあい、相互作用を有する」とは、アルゴリズム又はビジネスモデルの特徴が技術的特徴と密接に結合し、或る技術的課題を解決するための技術的手段を共同で構成し、相応の技術的効果を得られることを言う。


 アルゴリズムについては、例えば、請求項に記載のアルゴリズムを具体的な技術分野に応用して具体的な技術的課題を解決できる場合、当該アルゴリズムは技術的特徴と「機能において支持しあい、相互作用を有する」と認められる。当該アルゴリズムは技術的手段の一部であり、進歩性の審査においては、当該アルゴリズムの発明に対する貢献を考慮すべきである。

 

 また、ビジネスモデルについては、例えば、請求項に記載のビジネスモデルの特徴が、技術的特徴による調整又は改善を要する場合、当該ビジネスモデルの特徴と技術的特徴とは、「機能において支持しあい、相互作用を有する」と認められる。従って、進歩性の審査において、当該ビジネスモデルの発明に対する貢献を考慮すべきである。

2-2.明細書及びクレーム作成上の要求
 「6.3 明細書及びクレーム作成上の要求」において、明細書の作成については、技術的特徴と、これと機能において互いに支持しあい相互作用を有するアルゴリズム又はビジネスモデルの特徴とが、どのように共同で作用し、有益な効果を生むかを明記すべきとされている。例えば、アルゴリズムについては、抽象的なアルゴリズムと具体的な技術分野を結び付けるべきであり、少なくとも 1 つの入力パラメータと、それと関連する出力結果との定義を、当該技術分野の具体的なデータと関連付ける必要がある。ビジネスモデルについては、当業者が明細書の記載に基づいて当該発明を実現できるよう、技術的課題の解決過程を詳細に説明するべきである。


 また、有益な効果については、例えば品質、精度、又は効率の向上、システム内部性能の改善等の従来技術と比べた具体的な効果を、明細書に明確且つ客観的に記載すべきである。例えば、客観的なユーザー体験の向上も、明細書で説明することができる。その際は、当該ユーザー体験の向上が、アルゴリズム又はビジネスモデルの特徴と技術的特徴とがどのように協働することにより実現されたかについて、記載すべきである。


 また、クレームについても、技術的特徴と、該技術的特徴と機能において互いに支持しあい相互作用を有するアルゴリズム又はビジネスモデルの特徴と、を記載すべきことが規定されている。

3. 所感
 本改正は、急増する AI 及びブロックチェーン等の新たな技術分野の出願に対応するために、コンピュータープログラム関連発明に対する審査基準の一部として追加されたものである。

 

 専利法の保護対象(専利法第 25 条第 1 項第 2号)、及び発明の定義(専利法第 2 条第 2 項)の 2要件について示された審査基準は、コンピュータープログラム関連発明について従来の審査基準に記載されていたものと基本的に同じであり、特に AI
ブロックチェーン等の新たな技術分野に特化した基準を示すものではない。ただし、これらの要件に関する審査事例では、一部に AI によるディープラーニングやブロックチェーンの例が含まれており、これらの技術分野の出願に対し上記の審査基準がどのように適用されるかが、具体的に示されている点で参考価値が高い。


 新規性・進歩性については、従来のコンピュータープログラム関連発明に関する審査基準には、関連の項目が設けられていなかった。これに対し、本改正では、アルゴリズム又はビジネスモデルの特徴と技術的特徴とを含む発明の新規性・進歩性の審査において、請求項に記載された全ての特徴を考慮すべきとの原則が明記された。また、更に進歩性の判断について、「技術的特徴と機能において支持しあい、相互作用を有するアルゴリズム又はビジネスモデルの特徴を、技術的特徴とともに、一つの全体として考慮すべき」ことが明記された意義は大きい。従来の審査実務では、請求項に含まれる個々の特徴、即ち、技術的特徴とアルゴリズム又はビジネスモデルの特徴とが切り離して別々に考慮され、それぞれが従来技術に開示されていることによって、安易に進歩性が否定される例も多かった。本改正により各構成要素間の相互作用が考慮されるべきことが明確になり、実質的な審査基準の緩和となって、より多くの「アルゴリズム又はビジネスモデルの特徴」を含む発明に対し進歩性が認められるようになることが期待される。

 

 全体として、本改正の内容は、AI 及びブロックチェーン等の新たな技術分野の出願を行う出願人、代理人にとって非常に参考になるものである。これらの技術分野により特化した新規性・進歩性の判断基準や、記載要件の判断基準などについては、今後の審査実務の蓄積を通じて、更に明らかになってくることが期待される。

 

 

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