「専利侵害紛争事件の審理における法律適用に関する若干の解釈(三)」案の公表/商標法第5回改正案のポイント解説【中国】【特許】【商標】【訴訟】
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Shangcheng Newsletter Vol. 29 (2026-2)
<尚誠ニュース>
- ●ホームページリニューアルのお知らせ
<中国知財ニュース>
- ●「専利侵害紛争事件の審理における法律適用問題に関する解釈(三)」案の公表について
- ●商標法改正案のポイント解説
<尚誠ニュース>
- ●ホームページリニューアルのお知らせ
この度、尚誠知識産権代理有限公司のホームページをリニューアルいたしました。これから随時、このホームページを通して、中国の最新IPニュースや法律情報等、皆様のお役に立てるような情報をお届してまいりますので、ぜひご活用いただければと思います。
【主なリニューアル内容】
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見やすさを重視した新しいデザインに変更
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<中国知財ニュース>
- ●「専利侵害紛争事件の審理における法律適用問題に関する解釈(三)」案の公表について
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2025年12月20日、最高人民法院は「専利侵害紛争事件の審理における法律適用問題に関する解釈(三)」の案を公表し、2026年2月2日を期限にパブリックコメント募集を行った。
今般公開された司法解釈案は、2009年公布の「専利侵害紛争事件の審理における法律適用問題に関する解釈」、及び2016年公布・2020年改正の「専利侵害紛争事件の審理における法律適用問題に関する解釈(二)」に続く、一連のシリーズとなる司法解釈である。そのため、本司法解釈案は、これまで発行された各種の単発の司法解釈に含まれていた規定や、裁判例において採用されてきた運用ルールを、体系的にまとめなおしたものとの色彩が強い。新たな内容としては、悪意の訴訟提起に関する判断基準が示された点が、注目に値する。以下、全31条からなる本司法解釈案の主な内容を紹介する。
- (1)管轄異議について(第1~3条)
原告が事件を都合の良い裁判所に管轄させるために事件と実質的に無関係な被告を追加する行為や、被告が時間稼ぎのために実質的な理由のない管轄異議を申し立てる行為に対処するための規定が設けられた。また、商品引渡地やネットショッピングの商品受領地は、管轄権を発生させる侵害行為地とはみなされないことも規定されている。
(2)侵害訴訟と評価書・無効審判との関係(第4~7条)
従来の司法解釈では、実用新案又は意匠の侵害訴訟において裁判所は権利者に評価報告書の提出を要求できると規定されていたが、本司法解釈案では、更に、原告が正当な理由なく合理的期間内に評価報告書を提出しない場合、訴訟が却下されると規定されている。また、報告書の評価が否定的な場合、裁判所は被告に対し、従来技術の抗弁を行うか、無効審判を提起するかを尋ね、被告が無効審判提起を理由に訴訟審理の中止を求めた場合、裁判所は、明らかに侵害が成立しない場合を除き、訴訟審理を中止することも規定されている。
(3)侵害訴訟の主体適格(第8~9条)
中国の実施権者には独占的実施権者、排他的実施権者、通常実施権者があり、独占的実施権者は専利権者を含む他者の実施を許さない独占的な実施権を有し、排他的実施権者は専利権者以外の他者の実施を許さない排他的な実施権を有する。本司法解釈案では、独占実施権者は単独で訴訟提起可能であり、排他的実施権者は専利権者と共同で、又は専利権者が訴訟提起しない場合に単独で訴訟提起可能であり、通常実施権者は、特許権者からの明確な授権があれば訴訟提起可能であると規定されている。この点は、従来の司法解釈の規定通りである。また、独占的実施権者が訴訟で損害賠償を得た場合、同じ権利について専利権者が別件訴訟で損害賠償を求めても、当該侵害行為により新たな損害が発生したことを証明できない限り、裁判所はこれを支持しないとの規定が設けられている。
更に、専利権の譲受人は、譲渡人の授権があれば、移転登録日前の侵害行為に対して自らの名義で訴訟を提起することができることも規定されている。
(4)権利解釈(第10~16条)
被疑侵害技術が、明細書に記載された「克服すべき技術的欠陥」を有する場合、人民法院は、当該被疑侵害技術は専利権の技術的範囲に属しない、即ち非侵害、と判断することが規定されている。
また、出願人/権利者が請求項、明細書又は図面に対して行った減縮的な補正又は意見陳述が審査官に明確に否定されなかったことを被疑侵害者が証明できる場合、当該減縮された部分に対して禁反言原則が適用され、権利範囲に含まれるとの主張が許されないことが明記されている。更に、明細書等の記載に基づいて、請求項が特定の発明を特別に排除していると当業者が確定できる場合にも、当該発明が権利範囲に含まれるとの主張は許されないことも規定されている。請求項における、いわゆる機能的特徴は、権利解釈時に明細書に開示された実施形態及びその均等範囲へと限定解釈されるが、本司法解釈案では、発明を機能又は効果により限定する特徴であっても、当該機能または効果に対応する特定の構造、成分、手順、条件またはそれらの関係等を限定・暗示している特徴については、機能的特徴とはみなされないという例外が規定されている。
被訴侵害者が、業として特許方法の実質的内容を製品に固定し、特許方法の再現に代替不可能な役割を果たした場合、当該特許方法の直接侵害とみなされる旨が規定されている。これは、通信方法に関する過去の特許侵害事件判決において採用された法理である。当該事件では、方法特許のクレームにクライアント端末で実施されるステップが含まれていたものの、特許方法の主要なステップを実施することができるルータ製品を提供した事業者の行為が直接侵害を構成すると判断された。中国の専利法には日本の間接侵害にあたる規定がないため、該当の行為は、このような法理を用いて処理されることになる。
明確性要件について、当業者が明細書などの出願書類や出願包袋、並びに参考書、教科書等を参酌しても請求項中の用語の意味を確定できない場合、当該請求項に基づく侵害訴訟は却下されることが規定されている。これも従来の裁判で採用されてきた判断基準である。
(5)意匠権の権利解釈(第17~18条)
人民法院は、意匠の簡単な説明を組み合わせて意匠の権利範囲を確定するが、使用状態参考図と意匠の簡単な説明の記載に齟齬がある場合、使用状態参考図を考慮すると規定されている。
被訴侵害製品の一部の図面しか提示することができないが、一般消費者が当該一部の図面およびその種の製品の特性に基づいて、その他の部分の意匠的特徴を推定することができる場合、人民法院は、反証がある場合を除き、これを侵害比対の根拠とすることができることが規定されている。
(6)侵害抗弁(第19~24条)
侵害訴訟での従来技術の抗弁について、同一文献中の異なる2つの実施形態に基づく抗弁は受け入れられないが、同一文献中の異なる部分に記載された内容が、文言上相互に解釈し合い、技術的に相互に支え合い、共同して一つの技術的課題を解決するものである場合には使用可能であることが規定されている。また、一件の従来技術文献と公知常識との組合せに基づいて従来技術の抗弁を行い、且つ当業者が創造的労働を経ることなく連想し得るものである場合、抗弁が成立することも規定されている。この規定は、従来技術の抗弁に対する制限の緩和となり得る。
一審で従来技術/意匠の抗弁を行わず、二審で行った場合でも審理されるが、再審で初めて行った場合には審理されない。従来技術/意匠の抗弁が裁判所に支持されず、後審において新たな証拠が提示された場合には、再度の審理がなされる。
当事者が、先願の中国出願に基づいて非侵害の抗弁を行い、被疑侵害技術の全ての特徴が当該先願に単独で開示されている場合、非侵害と判断されることが規定されている。この規定は、従来技術の抗弁の適用対象を、係争特許の出願日前に出願され出願後に公開された抵触出願(日本で言うところの拡大先願)にまで拡大するものと理解できる。
中国の専利法第77条には、「専利権者の許可を得ずに製造販売された専利権侵害製品であることを知らずに、生産経営を目的として、その製品を使用し、販売の申出を行い、販売したとき、当該製品の合法的な出所を証明できる場合には、賠償責任を負わない。」という「合法的出所の抗弁」が設けられている。本司法解釈では、当該抗弁が成立した場合、使用・販売等を行った者は、権利者の損害の賠償だけでなく、権利者が権利維持のために支払った合理的な費用(訴訟費用等)の負担もしなくてよいとする案と、販売状況に応じて費用を負担すべきとする案の2つが示され、いずれの案を採用するかについてパブリックコメントが募集された。
(7)悪意の訴訟(第25~26条)
権利者が、法律上・事実上の根拠を欠くことを知りながら、不正な利益を得る目的で特許侵害訴訟を提起し他人に損害を与えた場合、悪意の訴訟として損害賠償責任を負うべきことが規定されている。具体的には、①権利者が従来技術・意匠であることを知りながら、又は詐欺や重要事実の秘匿により取得した専利権で訴訟提起した場合、②専利権の無効や存続期間満了等を知りながら訴訟提起した場合、③法的又は事実的な根拠のない訴訟提起により故意に他人の株式上場等を妨害した場合、④その他の悪意の訴訟と認められる場合が該当する。近年、悪意の訴訟と認定された裁判例が増加しており、本規定は、そこで蓄積された判断基準をまとめたものと言える。また、悪意の訴訟による損害賠償の金額は、悪意の程度、損害状況及び因果関係などを考慮して決定するとされている。
(8)判決の執行・損害賠償(第27~30条)
専利法第47条には、「無効宣告された専利権は当初から存在しなかったものとみなされる。専利権の無効審決は、無効審決前に人民法院が下し且つ既に執行された侵害訴訟判決、調停書、既に履行又は強制執行された行政処理決定、及び既に履行された実施許諾契約又は権利譲渡契約に対して遡及効を有しない。但し、専利権者の悪意により他人にもたらした損失は、賠償しなければならない(後略)。」と規定されている。本司法解釈案では、ここでいう無効審決には全部無効と部分無効が含まれること、執行には部分執行が含まれることを明確にしている。部分的に執行されている場合、無効審決は未執行部分に対しては、遡及効を有する。また、侵害訴訟の判決後に全部無効審決が出された場合、それ以降の判決の強制執行の請求や再審請求は不受理となり、既に執行中のものは中止される。
また、裁判所は、事案の状況に応じては、非金銭給付義務についても遅延履行金を命ずることができることも規定されている。
更に、侵害訴訟における損害賠償請求について、権利者が、権利者の損失、侵害者の利益、または実施料相当額の合理的な倍数に基づいて賠償額を主張し、且つ、提出した証拠により合理的に推算できる場合、人民法院は、反証がない限り、これを支持しなければならないことも規定されている。
本司法解釈案には、上記(6)のようにパブリックコメントを受けて方針を決定する部分も残されており、パブリックコメント募集期間終了後、一定の時間をかけて議論を行った上で、最終版の確定・公表に至ると思われる。
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本司法解釈案に関する今後の動向を注視し、新たな発表等があった場合には、速やかに皆様にお知らせします。
- ●商標法改正案のポイント解説
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2025年12月27日、中国全国人民代表大会の公式ウェブサイトに『中華人民共和国商標法(改正草案)』(以下「草案」という)が公表され、パブリックコメント募集が開始されて、各界の広範な関心を集めた。今回の改正は、1983年3月1日に施行された中華人民共和国商標法の第5次改正にあたり、同時に、初めての全面的な改正でもある。主な改正内容は、商標法の全体構造の調整、概念・定義の明確化、規制範囲の拡大、手続きの最適化、法的責任の強化などに現れており、社会の関心が高い悪意の商標出願・商標ストック行為、馳名商標の保護範囲、異議申立や不服審判などの手続きにおける空転現象、および「公衆の誤認をまねく」使用の乱れなどの問題について対応を行っている。
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草案では、現行の商標法の8章73条に「商標登録の要件」という章が新たに追加され、9章84条へと拡充された。再構築された全体の構成は、より科学的で厳密なものとなった。草案内容のうち、商標の権利付与・権利確定に係わる実務に特に影響が大きいと思われるいくつかの内容について、以下に説明する。
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1.登録可能な商標のタイプの拡大:「動的商標」の保護の新設
草案は初めて「動的商標」を登録可能な商標のタイプに含め、第14条において「自然人、法人又は非法人組織の商品を他人の商品と区別することができる文字、図形、アルファベット、数字、立体的形状、色彩の組合せ、音声、動的商標等、並びにこれらの要素の組合わせを含む標章は、すべて商標登録出願をすることができる。」と明記した(改正・追加部分に下線付与、以下同様)。
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これは単なる要素の追加だけではなく、時代の発展に対応した制度的革新でもあり、企業がデジタル環境で創出する動的商標(例えば、携帯電話やパソコンの起動・終了画面、アプリケーション起動時のローディングアニメーション、スポーツ選手の特徴的な祝福動作、など)に対して明確な法的保護根拠を提供するものである。
2.悪意の出願・商標ストック行為の規制:審査と罰則の明確化
商標登録の規範に関して、草案第18条は現行法第4条(悪意の出願の拒絶)と第44条(不正な手段による登録の無効)の関連内容を統合し、「使用を目的とせず、明らかに通常の生産経営の必要性を超えて商標登録出願をしたものについては、登録をしない。欺瞞又は他の不正な手段により商標登録出願をしてはならない。」と記載した。
一方で、同条は、現行法で規定されている「使用を目的としない悪意の商標登録出願は拒絶しなければならない」を、「使用を目的とせず、明らかに通常の生産経営の必要性を超えて商標登録出願をしたものについては、登録をしない」と修正した。これにより、「悪意」を審査する際にポイントとなる基準が「使用目的」と「通常の生産経営の必要性」にあることが明確化され、審査基準がより客観性を帯びることとなった。
他方で、同条は「欺瞞又は他の不正な手段」により商標登録した行為について、「商標局は当該登録商標の無効宣告を行う」との規定を、「商標登録出願をしてはならない」との規定へと修正した。この調整は、商標登録秩序の維持が「事後的救済」から「事前予防」へと転換され、誠実信用の原則が強化されたことを示している。
同時に、草案は悪意の商標登録出願行為の具体的な状況と罰則措置を明確にした。第53条では、商標登録出願者が悪意による商標登録出願行為を行い、悪影響を及ぼした場合、商標法執行部門は警告を与え、10万元以下の罰金を科すことができるとしている。
まず、同条に列挙されている「悪意の出願」の具体的な状況としては、以下のものが含まれる。
1)草案第15条(使用禁止標章)の規定に違反することを知りながら、なお商標として登録出願したもの(即ち、中国共産党の名称・党旗・党徽・勲章、中華人民共和国の国名・国旗などと同一又は類似のもの、外国の国名・国旗などと同一又は類似のもの、各国政府よりなる国際組織の名称・旗などと同一又は類似のもの、実施管理し、保証することを表す政府の標章・検査印と同一又は類似のもの、赤十字・赤新月の名称・標章と同一又は類似のもの、民族差別的な扱いの性質を帯びたもの、欺瞞性を帯び公衆に商品の品質等の特徴又は産地について誤認を生じさせやすいもの、社会主義の道徳・風習を害し又はその他の悪影響を及ぼすものなどの標章。なお、第15条の「使用禁止標章」には、草案において中国共産党関連の標章が追加された)。
2)草案第18条の規定に違反して商標登録を出願したもの(即ち、「使用を目的とせず、明らかに通常の生産経営の必要性を超えて商標登録出願をしたもの」、および「欺瞞又は他の不正な手段により商標登録出願をしたもの」)。
3)草案第20条(馳名商標の保護に関する規定)、第21条(他人の未登録商標の抜け駆け登録に関する規定)、第23条(「商標登録出願は、先行権利を侵害してはならず、抜け駆け登録してはならない」との規定)の規定に故意に違反して商標登録を出願したもの。
次に、同条が「悪意のある出願」に対して新設した「警告+10万元以下の罰金」という措置は、法的な結果を商標登録制度の内部における「登録を認めない」(拒絶/無効)から、市場監督管理部門が直接科す「行政処分」へと拡大するものである。これは、「悪意のある出願」行為が、もはや単に個別の出願が認められないという手続き上の問題にとどまらず、独立した行政違法行為を構成することを意味する。
3.馳名商標保護の強化:未登録の馳名商標の保護範囲の拡大
草案第20条第2項は、現行法で規定されている「非同一又は非類似の商品について登録出願した商標が、中国で登録されている他人の馳名商標を複製、模倣又は翻訳したものであって、公衆を誤認させ、当該馳名商標登録者の利益が損なわれる可能性があるときは、その登録をせず、かつその使用を禁止する。」との規定を、「非同一又は非類似の商品について登録出願した商標が、他人の馳名商標を複製、模倣又は翻訳したものであって、公衆を誤認させ、当該馳名商標の所有者の利益が損なわれる可能性があるときは、その登録をせず、かつその使用を禁止する。」と修正した。
この修正により、「中国で登録されている」という条件が撤廃され、商品・役務区分を超えた保護を受ける馳名商標の範囲が、「登録済み」の馳名商標から「未登録」馳名商標にまで拡大された。これは「登録主義」から「名声主義」への転換を示す。商標権利者にとっては、権利の保護を要求する時点で「商標が中国で馳名な状態に達していること」の証明に集中すればよくなり、権利保護のハードルが低くなった。
4.商標の権利付与・権利確定の手続きの最適化:異議申立期間の短縮、審査審理中止事由の明確化、審査基準の規範化、関連する隔離期間の削除
草案による商標の権利付与・権利確定手続きの最適化は、主に以下の点に現れている。
第一に、草案第35条は、「初歩査定及び公告された商標について、公告の日から2ヶ月以内に、この法律の第19条、第20条、第21条、第22条第1項、第23条の規定に違反していると先行権利者、利害関係者が判断したとき、又はこの法律の第15条、第16条、第17条、第19条、第24条の規定に違反していると何人かが判断したときは、国務院の商標管理部門に異議を申し立てることができる。公告期間を満了しても異議申立がなかったときは、登録を許可し、商標登録証を交付し公告する。」と規定している。
ここでは、現行法で規定されている商標異議申立期間を公告から3ヶ月から2ヶ月に短縮した。この調整は商標審査と登録の効率向上を目的とするが、異議申立決定及び証拠提出の時間が短縮されるため、異議申立人に対してより高い要求を課している。異議申立人は商標の監視を強化し、より短い時間内に異議申立の準備を完了させる必要がある。
第二に、草案第40条は、「国務院の商標管理部門(訳注:国家知的財産局)が商標異議申立審査、拒絶査定不服審判、登録不許可の不服審判及び無効宣告案件の審理過程において、関連する先行権益の確定について、人民法院で審理中又は行政機関で処理中の別案件の結果を根拠としなければならないときは、通常、審査審理を中止しなければならない。中止の原因が解消された後は、速やかに審査審理手続を再開しなければならない。」と規定している。
この規定は、手続き中止の適用事由を明確化するものである。商標異議申立、拒絶査定不服審判、登録不許可の不服審判、無効宣告案件における「先行権益の確定について、人民法院で審理中又は行政機関で処理中の別案件の結果を根拠としなければならない」場合、即ち、例えばそれらの審理中に引用商標に対する不使用取消の審理結果を待つ必要がある場合などの審理中止が、「審査を中止することができる」から「通常、審査審理を中止しなければならない」に変更された。これは、審査機関が原則として審査審理を中止する必要があることを意味し、審理中止の確実性と予見可能性を高める。
第三に、草案第40条は同時に、「人民法院は、国務院の商標管理部門がこの法律の第19条に基づいて下した拒絶査定不服審判の審決、登録不許可不服審判の審決又は無効宣告裁定を審理する場合、被訴審決、裁定が下されたときの事実状態を基準としなければならない。」と規定している。
これは、商標行政訴訟において「事情変更の原則」が適用されなくなることを意味する。例えば、拒絶査定不服審判の審決取消訴訟では、この規定に基づき、訴訟段階で引用商標の権利状態に変化が生じた場合(例えば、取り消し、無効宣告などが生じた場合)であっても、法院は依然として審判段階において当該引用商標が有効であった事実を基に判決を下す必要がある。このため、草案通りの改正が行われた場合、出願人は、商標登録の障害となる可能性のある全ての先行権利について早期かつ包括的なリスク評価を行い、審決が下される前に障害を解消し、対応の遅れのために出願が拒絶される事態を回避する必要がある。
第四に、草案第48条は、「商標登録者がその登録商標の抹消を申請した場合、抹消公告の日から1年以内において、国務院の商標管理部門は、他人が同一又は類似の商品について当該商標と同一又は類似の商標登録出願をした場合、これを認めない。」と規定している。
ここでは、現行法に規定されている、無効審決・取り消しを受けた商標、及び存続期間満了で更新されずに抹消された商標と同一又は類似の商標登録出願に対する1年間の隔離期間の規定を削除した。これは、ある商標が最終的に無効とされた、取り消された、または有効期間満了後に更新されなかった場合、その商標と同一・類似の商標が直ちに出願可能となることを意味する。
5.商標使用管理の強化:公衆誤認に対する責任の新設、コンプライアンス使用要件の細分化
草案第56条第1項は、「商標登録者が登録商標の使用過程において、登録商標、登録者の名義、住所又はその他の登録事項を許可なく変更したとき、若しくは公衆を誤認させる方法で登録商標を使用したときは、商標法執行部門は、期間を定めて是正するよう命じる。当該期限内に是正しないときは、5万元以下の罰金を科す。情状が重大な場合は、国務院の商標管理部門が当該登録商標を取り消す。」と規定している。
同条は現行法で規定されている登録商標の主な取消し事由(即ち、登録商標の変更、登録者名義・住所又はその他の登録事項の変更)に、新たに「公衆を誤認させる方法で登録商標を使用した」場合を追加した。同時に関連する法的責任をさらに明確化し、違反使用行為に対して「5万元以下の罰金」を科す罰則を新設した。これにより、「期間を定めて是正するよう命じる⇒罰金(5万元以下)⇒商標登録取り消し」という段階的な懲戒モデルが形成される。
以上を総合すると、今回の改正草案の内容が最終的に成立すれば、手続き、実体から法的責任に至るまで、商標実務の操作ロジックが再構築されることになると考えられる。
弊所は、引き続き今後の立法動向に注目し、新たな情報が入り次第、皆様に報告すると同時に、法改正による変化に適時適応しながら、より専門的かつ効率的な法的サービスを提供していく所存です。